======スコラスティック====== =====概要===== スコラスティック社 (Scholastic Corporation) は、[[J・K・ローリング]]による[[ハリー・ポッター]]シリーズの米国における公式出版社です。英国の[[ブルームズベリー]]社と並び、このシリーズを世界的な現象へと押し上げた重要な役割を担いました。特に、米国市場向けに独自の編集方針を打ち出し、それが米国版の大きな特徴となっています。 =====ハリー・ポッターシリーズにおける役割===== スコラスティック社は、編集者であった[[アーサー・A・レビン]]の慧眼により、当時まだ英国で出版されたばかりの『[[ハリー・ポッターと賢者の石]]』の米国出版権を獲得しました。その際、10万5000ドルという児童書としては破格の契約金を支払ったことは、出版業界で大きな話題となりました。 1998年にシリーズ第1巻を出版して以来、2007年の最終巻『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』に至るまで、全7巻の米国版を手がけました。同社の強力なマーケティング戦略と学校や書店への流通網は、シリーズが米国内で爆発的な人気を獲得する上で不可欠な要素でした。 =====米国版の主な特徴===== スコラスティック社が出版した米国版は、英国のオリジナル版とはいくつかの重要な違いがあります。これらは主に、米国の若い読者層への訴求力を高める目的で行われました。 * **タイトルの変更 (Title Change)** - 最も有名な変更点として、第1巻の原題 //Harry Potter and the Philosopher's Stone// が、//Harry Potter and the Sorcerer's Stone// へと変更されました。「Philosopher(哲学者)」という単語が子供向けではないと判断されたためです。この変更は、その後の米国におけるシリーズ展開の基礎となりました。 * **本文の「米国化」 (Americanization of the Text)** - 米国の読者がより親しみやすいように、英国特有の単語や表現が、意味の通じる米国の同義語に置き換えられました。これらの変更は、物語の根幹には影響しない範囲で行われています。 * 例: //jumper// (セーター) → **sweater** * 例: //mum// (お母さん) → **mom** * 例: //biscuits// (ビスケット) → **cookies** * **独自のイラスト (Unique Illustrations)** - 米国版の全7巻の表紙と各章の扉絵は、イラストレーターの[[メアリー・グランプレ]]によって描かれました。彼女の描く、暖かくも神秘的なタッチのイラストは、米国版[[ハリー・ポッター]]のイメージとして広く定着し、多くのファンに愛されています。 =====幕後情報===== * スコラスティック社による米国版のテキストは、他の多くの国で翻訳版を制作する際の底本として使用されることがありました。 * 編集者の[[アーサー・A・レビン]]は、自身の名を冠したインプリント(出版レーベル)「Arthur A. Levine Books」から[[ハリー・ポッター]]を出版しました。彼はシリーズ完結まで一貫して担当編集者を務め、[[J・K・ローリング]]と緊密な関係を築きました。