======優先呪文の効果====== =====現象の基本情報===== * **名称**: プリオリ・インカンタテム (Priori Incantatem) * **分類**: 稀な魔法現象、[[魔杖学]] * **効果**: 二本の**兄弟杖**(同じ魔法生物から芯を提供された杖)が強制的に戦わされた際に発生する。一方の杖が、それまでに行った魔法を逆順で再現する「残響」を生み出す。 * **視覚的特徴**: 杖の先端同士が金色の光線で繋がり、その光線に沿ってエネルギーのビーズが移動する。最終的に、光がドーム状に術者たちを覆うことがある。 =====詳細と実例===== この現象の最も詳細に記録された実例は、1995年6月24日に[[リトル・ハングルトン]]の墓地で起きた、[[ハリー・ポッター]]と[[ヴォルデモート]]卿の決闘である。 * **発生経緯**: [[ハリー・ポッター]]が放った[[武装解除呪文]] (エクスペリアームス) と、[[ヴォルデモート]]が放った[[死の呪い]] (アバダ・ケダブラ) が空中で衝突した際に発生した。彼らの杖は、どちらも[[アルバス・ダンブルドア]]の不死鳥である[[フォークス]]の尾羽を芯に持つ**兄弟杖**だったため、この現象が引き起こされた。 * **現象の進行**: 二人の術者の意志の力が金色の光線を通してぶつかり合い、ハリーの強い意志が光のビーズを押し返し、[[ヴォルデモート]]の杖に現象を強制した。その結果、[[ヴォルデモート]]の杖は最近殺害した人々の「影」または「残響」を逆順に放出した。 * **出現した「影」**: - [[セドリック・ディゴリー]] - [[フランク・ブライス]] - [[バーサ・ジョーキンズ]] - [[リリー・ポッター]] - [[ジェームズ・ポッター]] * **結末**: これらの「影」は[[ゴースト]]ではなく、過去の魔法の痕跡であったが、一時的に[[ヴォルデモート]]の注意を引きつけ、ハリーに語りかけることができた。彼らの助けにより、ハリーは光の接続を断ち、[[移動キー]] (ポートキー) を使って墓地から脱出することに成功した。 =====発生条件と対抗策===== * **発生条件**: この現象は、同じ魔法生物から芯(例えば、同じ不死鳥の尾羽や同じドラゴンの心臓の琴線)を得た二本の杖、すなわち**兄弟杖**が、互いの持ち主によって強制的に戦わされた場合にのみ発生する。これは極めて稀な状況である。 * **意志の力**: どちらの杖が呪文を「吐き出す」側になるかは、術者の意志の力によって決まる。決闘においてより強い意志を持つ術者が、相手の杖にこの効果を強制することができる。 * **対抗策**: 現象が発生した場合、唯一の対抗策は、術者の一方が杖の接続を物理的に断つことである。これにより魔法の連鎖が断ち切られ、現象は終了する。 =====名称の語源===== 「Priori Incantatem」はラテン語に由来する。 * **Priori**: ラテン語の「//prior//」(前の、先の)から来ている。 * **Incantatem**: ラテン語の動詞「//incantare//」(呪文を唱える、魔法をかける)の対格形に由来する。 * **全体の意味**: 組み合わせることで「**前の呪文**」という意味になり、杖が過去の呪文を再現する効果を的確に表している。 =====関連情報===== * **呪文「プライオア・インカンタート」**: 「優先呪文の効果」という現象とは別に、特定の杖が最後に使った呪文を調べるための呪文として[[プライオア・インカンタート]] (//Prior Incantato//) が存在する。これは[[魔法省]]の役人などが捜査に用いる調査呪文である。1994年の[[クィディッチ・ワールドカップ]]の後、[[エイモス・ディゴリー]]が[[ハリー・ポッター]]の杖にこの呪文を使い、[[闇の印]] (モースモードル) が杖から放たれていないかを確認した。 * **映画での描写**: 映画版『[[ハリー・ポッターと炎のゴブレット]]』では、この現象は青と赤の光線が繋がり、巨大な金色の光のドームを形成する壮大な視覚効果で描かれた。出現した「影」は、半透明の青白い姿で表現されている。(映画設定)