======分霊箱 (Horcrux)====== =====基本信息===== * タイプ (Type): [[黒魔術]]の道具、[[魂器]] * 所有者 (Owners): [[ヴォルデモート卿]] * 製造者 (Maker): [[卑劣なるヘルポ]] (最初の製作者)、[[ヴォルデモート卿]] =====記述と外観===== //分霊箱//(ホークラックス)とは、魔法使いや魔女が自らの魂の一部を切り離し、それを特定の**物**や**生物**の中に隠すことで不死性を得るために使用する、[[黒魔術]]の中でも特に邪悪とされる道具の総称です。魂が分霊箱に繋がっている限り、たとえ本体の肉体が破壊されても、その者は死ぬことなく、幽霊よりも希薄な状態で存在し続けることができます。 分霊箱の作成には、魂を裂くという自然に反した行為が伴います。この行為は、//殺人//という「究極の悪の行為」によって達成されます。魂を裂いた後、特定の呪文を用いてその魂の断片をあらかじめ選んだ器に封じ込めます。器となる物に特定の外見的要件はなく、日常的な物から歴史的に価値のあるアーティファクト、さらには生物までが分霊箱になり得ます。 [[ヴォルデモート卿]]が作成した分霊箱の外観は、それぞれが彼にとって象徴的な意味を持つ物でした。 * [[トム・リドルの日記]] * [[マールヴォロ・ゴーントの指輪]] * [[サラザール・スリザリンのロケット]] * [[ヘルガ・ハッフルパフのカップ]] * [[ロウェナ・レイブンクローの髪飾り]] * [[ナギニ]] (蛇) * [[ハリー・ポッター]] (意図せずして作られたもの) =====魔法特性と用途===== * **不死性 (Immortality)**: 分霊箱の最も重要な機能は、製作者に不死を与えることです。魂の一部が地上に安全に繋ぎ止められている限り、肉体が完全に破壊されても死ぬことはありません。 * **作成方法 (Creation Process)**: - 1. 魂を裂く:殺人を犯すことで自らの魂を引き裂きます。 - 2. 呪文を唱える:魂の断片を分離するための、詳細は明かされていない恐ろしい呪文を唱えます。 - 3. 魂を封じ込める:分離した魂の断片を、選ばれた器に魔法で封じ込めます。 * **防御と脆弱性 (Defense and Vulnerability)**: 分霊箱は非常に強力な[[黒魔術]]によって守られており、通常の魔法や物理的手段では破壊できません。破壊するには、修復不可能なほど完全に破壊し尽くす必要があります。作中で確認されている破壊方法は以下の通りです。 * [[バジリスク]]の牙の毒 * [[グリフィンドールの剣]]([[バジリスク]]の毒を吸収したもの) * [[悪霊の火]] (Fiendfyre) * **自己防衛と影響力 (Self-Defense and Influence)**: 分霊箱は単なる器ではなく、内包された魂の断片により、ある程度の知覚や自己防衛能力を持ちます。[[トム・リドルの日記]]が[[ジニー・ウィーズリー]]を操ったように、近くにいる者の心に影響を与え、堕落させることが可能です。[[サラザール・スリザリンのロケット]]も、所有者の精神に深刻な悪影響を及ぼしました。 =====歴史===== 分霊箱を最初に作成したと記録されているのは、古代ギリシャの[[闇の魔法使い]]、[[卑劣なるヘルポ]]です。彼はこの主題に関する研究の創始者とされています。 数世紀後、[[ホグワーツ魔法魔術学校]]の生徒であった[[トム・マールヴォロ・リドル]](後の[[ヴォルデモート卿]])は、[[禁書の棚]]で分霊箱に関する記述を発見し、その概念に深く魅了されました。彼は[[ホラス・スラグホーン]]教授から、魂を複数に分割することの可能性について聞き出しました。魔法的に強力とされる「7」という数字にこだわり、彼は自らの魂を7つに分けるという前代未聞の計画を立てました。 彼は[[ホグワーツ]]在学中から卒業後にかけて殺人を繰り返し、6つの分霊箱を意図的に作成しました。しかし、1981年10月31日に[[ポッター家]]を襲撃した際、[[リリー・ポッター]]の[[愛の護り]]によって[[死の呪い]]が跳ね返り、彼の肉体は破壊されました。この時、すでに不安定だった彼の魂はさらに引き裂かれ、その場にいた唯一の生き物である赤ん坊の[[ハリー・ポッター]]に意図せずして魂の断片が宿り、7つ目の分霊箱が生まれました。 =====物語における役割===== 分霊箱は、『[[ハリー・ポッターと謎のプリンス]]』以降の物語の核となる要素です。[[アルバス・ダンブルドア]]が[[憂いの篩]]を通じて[[ハリー・ポッター]]に[[ヴォルデモート]]の過去を見せたことで、分霊箱の存在が明らかになり、それらをすべて破壊することが[[ヴォルデモート卿]]を倒す唯一の方法であると判明します。 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』では、[[ハリー・ポッター]]、[[ロン・ウィーズリー]]、[[ハーマイオニー・グレンジャー]]の3人が、残された分霊箱を探し出し、破壊するための旅に出ます。この探索は、第二次[[魔法戦争]]の勝利に向けた中心的な任務となりました。 - **[[トム・リドルの日記]]**: 『[[ハリー・ポッターと秘密の部屋]]』にて、[[秘密の部屋]]で[[ハリー・ポッター]]が[[バジリスク]]の牙で破壊。 - **[[マールヴォロ・ゴーントの指輪]]**: 『[[ハリー・ポッターと謎のプリンス]]』にて、[[アルバス・ダンブルドア]]が[[グリフィンドールの剣]]で破壊。 - **[[サラザール・スリザリンのロケット]]**: 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』にて、[[ディーンの森]]で[[ロン・ウィーズリー]]が[[グリフィンドールの剣]]で破壊。 - **[[ヘルガ・ハッフルパフのカップ]]**: 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』にて、[[秘密の部屋]]で[[ハーマイオニー・グレンジャー]]が[[バジリスク]]の牙で破壊。 - **[[ロウェナ・レイブンクローの髪飾り]]**: 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』にて、[[必要の部屋]]で[[ビンセント・クラッブ]]が放った[[悪霊の火]]によって意図せず破壊。 - **[[ナギニ]]**: 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』にて、[[ホグワーツの戦い]]の最中に[[ネビル・ロングボトム]]が[[グリフィンドールの剣]]で殺害(破壊)。 - **[[ハリー・ポッター]]**: 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』にて、[[禁じられた森]]で[[ヴォルデモート卿]]自身が放った[[死の呪い]]によって、[[ハリー]]の中の魂の断片のみが破壊された。 =====幕後情報===== * **名前の語源 (Etymology)**: 著者のJ.K.ローリングは、"Horcrux"という言葉の語源を明確には説明していませんが、ラテン語の //crux//(十字架、あるいは苦悩の根源)と、英語の //horror//(恐怖)を組み合わせた造語である可能性が示唆されています。(J.K.ローリングのインタビュー) * **作成の呪文 (Creation Spell)**: J.K.ローリングは、分霊箱を作成するための呪文は非常に恐ろしく、読者に公開するつもりはないと述べています。(J.K.ローリングのインタビュー)