======姿くらまし (Apparition)====== =====基本情報===== * **英語名 (English Name):** Apparition (出現) / Disapparition (消失) * **効果 (Effect):** 術者である[[魔法使い]]や[[魔女]]が、ある場所から姿を消し(Disapparition)、間髪入れずに別の場所に現れる(Apparition)ことを可能にする、高度な魔法による移動術。 * **分類 (Type):** 魔法による移動術、[[変身術]]の一分野。 * **要件 (Requirement):** 通常は[[杖]]を必要とするが、熟練した術者は杖なしでも可能。極めて強い精神集中が求められる。 =====原理と実践:3つのD===== 「姿くらまし」を成功させるためには、術者は **3つのD** として知られる要素に完全に集中しなければならない。これは[[ホグワーツ魔法魔術学校]]で教えられる際の基本原則である。 * **目的地 (Destination):** 行きたい場所を心の中で明確に、断固として思い描く。 * **決意 (Determination):** その空間を占めるという確固たる意志を持つ。 * **沈着 (Deliberation):** 焦らず、冷静に、慎重に移動を実行する。 これら3つの要素のいずれかが欠けても、「姿くらまし」は失敗する可能性が高い。特に決意が不十分な場合、最も危険な副作用である **[[身割れ]] (Splinching)** を引き起こすことがある。これは、身体の一部が元の場所に置き去りにされてしまう現象である。 =====学習とライセンス===== 「姿くらまし」は高度で危険な魔法と見なされており、[[イギリス魔法省]]の厳格な管理下にある。 * **学習:** [[ホグワーツ]]では、生徒が成人と見なされる17歳になる年度に、魔法省から派遣された専門の教官による「姿くらまし教室」が開催される。 * **ライセンス:** 17歳以上の[[魔法使い]]や[[魔女]]は、「姿くらましテスト」に合格することでライセンスを取得できる。このテストは非常に厳しく、一度で合格する者は多くない。例えば、[[ロン・ウィーズリー]]は眉毛の半分を置き去りにする「身割れ」を起こして一度不合格になっている。 =====現象と感覚===== 「姿くらまし」の実行には、特有の物理的感覚と音が伴う。 * **感覚:** 多くの術者が、非常に窮屈なゴムチューブの中を無理やり押し込まれるような、不快な圧迫感と表現している。 * **音:** 術者が姿を消したり現したりする際には、しばしば「ポン!」という大きな破裂音(Crack)が伴う。ただし、[[アルバス・ダンブルドア]]のような極めて熟練した術者は、ほとんど音を立てずに移動することができる。 =====制限と対抗策===== 「姿くらまし」は万能ではなく、いくつかの重要な制限が存在する。 * **[[姿くらまし防止呪文]] (Anti-Apparition Charm):** 特定の場所では、この呪文によって「姿くらまし」による侵入・脱出が阻止されている。[[ホグワーツ]]の敷地全体がその最も有名な例である。 * **距離:** 術者がよく知らない場所や、非常に遠い距離への「姿くらまし」は困難かつ危険である。大陸間のような長距離移動は不可能に近いとされる。 * **[[屋敷しもべ妖精]]の魔法:** [[屋敷しもべ妖精]]が用いる「姿くらまし」は、[[魔法使い]]のそれとは根本的に異なるルールで機能する。彼らは[[姿くらまし防止呪文]]がかけられた場所(例:[[マルフォイの館]]の地下牢)でも自由に出入りできる。この能力は、『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』において[[ハリー・ポッター]]一行の脱出を助ける重要な鍵となった。 =====物語における役割===== 「姿くらまし」は物語全体を通じて、登場人物たちの移動手段として、また重要なプロットデバイスとして頻繁に登場する。 * **移動手段として:** 第二次魔法戦争が激化するにつれ、[[不死鳥の騎士団]]のメンバーや[[ハリー・ポッター]]、[[ロン・ウィーズリー]]、[[ハーマイオニー・グレンジャー]]の3人組は、[[死喰い人]]から逃れるための主要な移動手段として「姿くらまし」に頼った。 * **[[二人現し]] (Side-Along Apparition):** まだライセンスを持っていない者や、移動先を知らない者を連れて移動する方法。[[ダンブルドア]]がハリーを連れて移動する際や、ハーマイオニーがハリーとロンを連れて逃避する際に多用された。 * **プロットの鍵として:** [[ヴォルデモート]]が[[ゴドリックの谷]]に現れた際や、3人組が[[魔法省]]から[[ロケット]]を盗んで脱出する際など、物語の重要な局面で決定的な役割を果たした。 =====幕後情報===== * **映画での描写 (映画設定):** 映画シリーズでは、「姿くらまし」は術者が黒い煙や白い光の渦となって消え、再び現れるという視覚効果で表現されることが多い。特に[[死喰い人]]は、威嚇的な黒い煙となって高速で飛行するように描かれるが、これは原作にはない映画独自の演出である。