======老いの杖====== =====基本情報===== * タイプ (Type): [[死の秘宝]]、[[杖]] * 所有者 (Owners): [[アンティオク・ペベレル]]、邪悪のエメリック、エグバート、ゴデロット、ヘレワード、バーナバス・デベリル、ロクシアス、[[ミューケウ・グレゴロビッチ]]、[[ゲラート・グリンデルバルド]]、[[アルバス・ダンブルドア]]、[[ドラコ・マルフォイ]]、[[ハリー・ポッター]] (最後の真の所有者)。[[ヴォルデモート卿]]も一時的に所持したが、真の所有者にはならなかった。 * 製作者 (Maker): 伝説では[[死神]]。しかし、[[アルバス・ダンブルドア]]は、[[ペベレル]]家の長兄である[[アンティオク・ペベレル]]自身が製作したと推測している。 =====記述と外観===== [[ニワトコ]]の木でできており、長さは15インチ。杖の芯は、所有者に死の訪れを告げる生物である[[セストラル]]の尻尾の毛である。杖の表面には、ニワトコの実の房に似た節くれだった彫刻が施されている。その強力さゆえに、歴史上多くの[[魔法使い]]がこの杖を識別し、追い求めてきた。 =====魔法の特性と用途===== * **無敵の杖**: 老いの杖は、これまでに作られた中で最も強力な[[杖]]であり、その真の所有者が臨む決闘において敗れることはないとされる。 * **忠誠心の移動**: この杖の忠誠心は、前の所有者を打ち負かすことによってのみ得られる。打ち負かすとは、[[武装解除呪文]]、[[失神呪文]]、あるいは殺害を意味する。[[ハリー・ポッター]]が[[ドラコ・マルフォイ]]から忠誠心を得たように、必ずしも前の所有者を殺す必要はない。この特異なルールが、杖の血塗られた歴史を生み出す原因となった。 * **驚異的な魔力**: 真の所有者でなくとも、この杖は並外れた強力な[[魔法]]を行使できる。しかし、その真価は真の所有者の手にあって初めて完全に発揮される。 * **修復能力**: 通常の[[杖]]では不可能とされるほどの高度な修復[[魔法]]が可能。[[ハリー・ポッター]]は、この杖を使って真っ二つに折れた自分自身の[[ヒイラギ]]と[[不死鳥]]の羽の杖を修復した。これは[[ハーマイオニー・グレンジャー]]ですら不可能だと考えていた偉業であった。 =====歴史===== この杖の歴史は「血塗られた軌跡」として知られ、所有権を巡る数多の殺戮に彩られている。 - **起源**: [[吟遊詩人ビードルの物語]]に含まれる「[[三人兄弟の物語]]」によれば、[[ペベレル]]三兄弟の長兄[[アンティオク・ペベレル]]が、旅の途中で出会った[[死神]]から与えられたとされる。アンティオクはすぐにその力を誇示したが、眠っている間に喉を切られて杖を奪われ、杖の歴史における最初の犠牲者となった。 - **中世から近代へ**: その後、杖は邪悪のエメリックやエグバートといった、歴史上の強力だが残忍な[[魔法使い]]たちの手に渡り、所有者が代わるたびに血なまぐさい逸話が残された。杖は「//死の杖// (The Deathstick)」や「//宿命の杖// (The Wand of Destiny)」といった異名で呼ばれるようになった。 - **グレゴロビッチとグリンデルバルド**: 20世紀初頭、著名な杖作りである[[ミューケウ・グレゴロビッチ]]が杖を所有し、その力の秘密を解き明かそうとしていた。しかし、若き日の[[ゲラート・グリンデルバルド]]が彼の工房から杖を盗み出し、新たな所有者となった。 - **ダンブルドアの所有**: [[アルバス・ダンブルドア]]は、1945年に行われた伝説的な決闘で[[ゲラート・グリンデルバルド]]を打ち破り、老いの杖の正当な所有者となった。彼は杖の力を破壊するため、自分が誰にも敗れることなく自然死する計画を立てていた。 - **所有権の複雑な移動**: [[天文台の塔の戦い]]において、[[ドラコ・マルフォイ]]が[[武装解除呪文]]で[[ダンブルドア]]の杖を奪ったため、知らぬ間に老いの杖の忠誠心はマルフォイに移った。[[セブルス・スネイプ]]がダンブルドアを殺害したのは、ダンブルドア自身の計画によるものであり、決闘における勝利ではなかった。 - **ハリー・ポッターへの忠誠**: その後、[[マルフォイの館]]で[[ハリー・ポッター]]が[[ドラコ・マルフォイ]]の杖を力ずくで奪い取ったことで、老いの杖の忠誠心はハリーへと移動した。 - **ヴォルデモートの誤算**: [[ヴォルデモート卿]]は[[ダンブルドア]]の墓から杖を盗み、[[スネイプ]]こそが真の所有者だと信じて彼を殺害したが、杖はヴォルデモートに完全には服従しなかった。 =====物語における役割===== 『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』において、物語の中核をなす[[魔法]]アイテムであり、[[死の秘宝]]の一つとして登場する。 [[ヴォルデモート卿]]が究極の力を求めてこの杖を追い求める過程は、物語の主要な筋書きの一つとなっている。杖の特異な忠誠心のルールは、[[ホグワーツの戦い]]における最終決戦の鍵を握る。老いの杖が真の所有者である[[ハリー・ポッター]]を傷つけることを拒んだため、ヴォルデモートが放った[[死の呪い]]は彼自身に跳ね返り、その敗北を決定づけた。 この杖は力の誘惑を象徴する存在でもある。[[ダンブルドア]]が若き日に「より大きな善のために」その力を求めたのに対し、ハリーは最終的に杖の力を手放すことを選んだ。彼は自身の杖を修復した後、老いの杖を[[ダンブルドア]]の墓に戻すことで、その血塗られた歴史に終止符を打とうとした。 =====舞台裏情報===== * 杖には「//The Deathstick//」(死の杖)や「//The Wand of Destiny//」(宿命の杖)といった複数の異名がある。これらは[[ゼノフィリウス・ラブグッド]]によって言及されている。 * 映画『[[ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2]]』では、物語の結末が原作と異なり、[[ハリー・ポッター]]は老いの杖を真っ二つに折って崖から投げ捨ててしまう。(映画設定)