======死の秘宝====== =====基本情報===== * タイプ (Type): [[伝説の魔法道具]]、三つ揃いの強力な物品群 * 所有者 (Owners): - **初代**: [[ペベレル家の三兄弟]] ([[アンチオク・ペベレル]]、[[カドマス・ペベレル]]、[[イグノタス・ペベレル]]) - **最後の完全な所有者**: [[ハリー・ポッター]] (三つ全てを同時に所有した唯一の魔法使い) - **各秘宝の歴代所有者**: 多数 (詳細は歴史の項を参照) * 製作者 (Maker): 伝説では**[[死]]**そのものによるとされる。しかし、[[アルバス・ダンブルドア]]は、極めて強力で才能ある魔法使いであった[[ペベレル家の三兄弟]]自身が作り出した可能性が高いと推測している。 =====記述と外観===== 「死の秘宝」は、魔法界の古い物語『[[吟遊詩人ビードルの物語]]』に登場する三つの伝説的な魔法道具の総称である。それぞれの秘宝は独自の外観と特性を持つ。 * **[[ニワトコの杖]] (the Elder Wand)**: 長さ15インチ (約38cm)、//ニワトコ//の木で作られ、芯には[[セストラル]]の尻尾の毛が使われている。杖の表面には節のような彫刻が連なっているのが特徴。 * **[[蘇りの石]] (the Resurrection Stone)**: 黒い石で、[[死の秘宝のシンボル]]が刻まれている。[[カドマス・ペベレル]]の子孫である[[マールヴォロ・ゴーント]]が指輪にはめ込んでいた際に、中央にひびが入った。 * **[[透明マント]] (the Invisibility Cloak)**: 銀色で、まるで水で織ったかのように滑らかでしなやかな布地。着用者を完璧に不可視にする能力は時間と共に衰えることがなく、ほとんどの呪文を跳ね返す。 =====魔法の特性と用途===== 三つの秘宝は、それぞれが「死」を克服するというテーマに関連した強力な魔法を持つ。 * **[[ニワトコの杖]]**: 史上最強とされ、無敵の力を持つと言われる[[杖]]。前の所有者を打ち負かした者(必ずしも殺す必要はない)が、その忠誠心を得ることができる。 * **[[蘇りの石]]**: 死者を現世に完全に呼び戻すことはできないが、その持ち主が望む死者の「影」や「面影」を呼び出すことができる。呼び出された者は生者の世界に属さず、悲しみを帯びている。 * **[[透明マント]]**: 着用者を完全に姿が見えない状態にする。一般的な透明マントとは異なり、その効果は永久的で、呪いや経年劣化の影響を受けない。[[死]]自身の目からも隠れることができるとされる唯一のマント。 三つの秘宝をすべて手にした者は**「死を制する者 (Master of Death)」**になると言われている。これは不死身になるという意味ではなく、死が避けられないものであることを理解し、恐れずに受け入れる賢者を指す、と[[アルバス・ダンブルドア]]は解釈した。 =====歴史===== 「死の秘宝」の起源は、『[[吟遊詩人ビードルの物語]]』に収められた「三人兄弟の物語」で語られている。 - **起源**: [[ペベレル家の三兄弟]]が危険な川を渡るため魔法で橋を架けたところ、彼らの腕前に感心したと同時に騙されたことに腹を立てた「死」が現れた。「死」は三人を称えるふりをして、それぞれに望む褒美を与えると言い、三つの秘宝が生まれた。 - **[[ニワトコの杖]]**: 長男[[アンチオク・ペベレル]]が手に入れたが、その力を自慢したため、その夜のうちに殺害され杖を奪われた。以来、杖は力ずくで所有者を変え、血塗られた歴史を辿った。著名な所有者には[[ゲラート・グリンデルバルド]]や[[アルバス・ダンブルドア]]がいる。 - **[[蘇りの石]]**: 次男[[カドマス・ペベレル]]が亡くなった恋人を取り戻すために手に入れたが、彼女が苦しむ姿に絶望し自害した。石は[[ゴーント家]]に代々伝わる指輪にはめ込まれ、最終的に[[ヴォルデモート卿]]が[[分霊箱]]の一つにした。 - **[[透明マント]]**: 末弟[[イグノタス・ペベレル]]が謙虚に「死から隠れられる物」として手に入れた。彼はマントを使い「死」から身を隠し続け、天寿を全うした。マントは[[イグノタス・ペベレル|イグノタス]]の子孫に代々受け継がれ、最終的に[[ジェームズ・ポッター]]を経て息子の[[ハリー・ポッター]]に渡った。 =====物語における役割===== 「死の秘宝」は、シリーズ第7巻『[[ハリー・ポッターと死の秘宝]]』の物語の中核をなす。 * 当初、[[ゼノフィリウス・ラブグッド]]が身に着けていたシンボルとして登場し、[[ハリー・ポッター]]、[[ロン・ウィーズリー]]、[[ハーマイオニー・グレンジャー]]の興味を引く。 * [[分霊箱]]を探す旅の途中で、三人は秘宝の伝説を知り、[[ヴォルデモート卿]]を倒すためのもう一つの道筋として秘宝の存在が浮上する。これは「不死を求める道(ヴォルデモート)」と「死を受け入れる道(ハリー)」の対立を象徴している。 * 最終的に、[[ハリー・ポッター]]は意図せずして三つの秘宝すべての正当な所有者となる。彼は[[蘇りの石]]を使って愛する者たちの霊から勇気をもらい、[[透明マント]]で身を守り、[[ニワトコの杖]]の真の主として[[ヴォルデモート卿]]と対峙した。 * ハリーは秘宝の力に溺れることなく、[[蘇りの石]]を[[禁じられた森]]に捨て、[[ニワトコの杖]]を[[アルバス・ダンブルドア]]の墓に戻すことを選択した。 =====幕後情報===== * J.K. ローリングは、「三人兄弟の物語」がジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』に含まれる「免罪符売りの話 (The Pardoner's Tale)」からインスピレーションを得たことを認めている (J.K. Rowling Web Chat Transcript, 2007)。 * [[死の秘宝のシンボル]](三角形の中に円と垂直線)は、それぞれ[[透明マント]]、[[蘇りの石]]、[[ニワトコの杖]]を表している。このシンボルは、当初[[ゲラート・グリンデルバルド]]が掲げた闇の印として[[ビクトール・クラム]]に誤解されていた。