グレゴロビッチ

マイキュー・グレゴロビッチ (Mykew Gregorovitch) は、ヨーロッパで名高い職人であり、イギリスのギャリック・オリバンダーと並び称される存在でした。彼はかつて、死の秘宝の一つである長老の杖を所有していましたが、若き日のゲラート・グリンデルバルドによって盗まれます。物語の終盤、長老の杖を追うヴォルデモート卿によって見つけ出され、杖に関する情報を引き出された後に殺害されました。彼の存在は、長老の杖の所有権の歴史を解き明かす上で極めて重要な鍵となります。

グレゴロビッチの人生は、彼が長老の杖を手に入れたことで大きく左右されました。

  • 長老の杖の所有と喪失

グレゴロビッチがどのような経緯で長老の杖を入手したかは不明ですが、彼はその杖が持つ伝説的な力を研究し、その特性を模倣しようと試みました。また、自身の店の評判を高めるために、自分が長老の杖を所有しているという噂を意図的に広めていました。しかし、この噂が若きゲラート・グリンデルバルドの耳に入ることになります。ある夜、グリンデルバルドはグレゴロビッチの工房に侵入し、彼が抵抗する間もなく失神呪文で気絶させ、長老の杖を盗み出しました。これにより、長老の杖の忠誠心はグリンデルバルドへと移りました。

  • 第二次魔法戦争と死

第二次魔法戦争中、ビクトール・クラムビル・ウィーズリーフラー・デラクールの結婚式で、グリンデルバルドがダームストラングの壁に刻んだ印(死の秘宝のシンボル)について語った際、グレゴロビッチの名前が再び浮上しました。

  同じ頃、不死身の杖を求めていた[[ヴォルデモート卿]]は、[[オリバンダー]]からグレゴロビッチが[[長老の杖]]を所有していたという情報を得て、彼の行方を追い始めます。1997年、[[ヴォルデモート卿]]はついに隠居していたグレゴロビッチの許に辿り着きました。[[ハリー・ポッター]]は[[ヴォルデモート卿]]との精神的な繋がりを通して、その場面を目撃します。グレゴロビッチは、杖はずっと昔に盗まれたと必死に訴えましたが、[[ヴォルデモート卿]]は彼の記憶を[[開心術]]で探り、金髪の若者(グリンデルバルド)が杖を盗む場面を確認すると、用済みとなったグレゴロビッチを[[アバダ・ケダブラ]]の呪文で殺害しました。

ヴォルデモート卿の記憶の中で描かれた晩年のグレゴロビッチは、白髪でふさふさした灰色の髭を持つ、背の低い老人でした。若い頃は、長老の杖の所有を吹聴して商売に利用するなど、野心的で抜け目のない性格だったと推測されます。しかし、ヴォルデモート卿と対峙した際には、命乞いをする臆病で哀れな姿を見せていました。

  • 杖作り (Wandmaking): グレゴロビッチは非常に優れた職人であり、その腕前はオリバンダーに匹敵するとされていました。彼の作った杖は、特に東ヨーロッパの魔法使いに高く評価されていました。ビクトール・クラムが使っていた、セイヨウシデとドラゴンの心臓の琴線から作られた硬くて太い杖は、グレゴロビッチの作品です。
  • 杖学の知識 (Knowledge of Wandlore): 彼は長老の杖を研究対象として所有しており、その特異な性質を理解しようと努めていました。このことから、彼はに関する深い知識を持っていたことがうかがえます。
  • 長老の杖 (The Elder Wand): グレゴロビッチが一時的に所有していた最も重要な物品。彼は決闘でこの杖を勝ち取ったわけではないため、厳密な意味での「主人」ではありませんでしたが、その「保管者」として杖の歴史に名を刻みました。
  • Mykew: スラブ語圏における「ミカエル (Michael)」の変形。「神に似たる者は誰か」を意味します。
  • Gregorovitch: スラブ語圏で一般的な父称姓で、「グレゴール (Gregor) の息子」を意味します。グレゴールはギリシャ語の「Gregorios」に由来し、「見張る者」「用心深い」といった意味を持ちます。彼が長老の杖を盗まれてしまったことを考えると、皮肉な名前と言えるかもしれません。
  • 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、クロアチア出身の俳優ラデ・シェルベッジアがグレゴロビッチを演じました。映画では、ヴォルデモート卿による彼の尋問と殺害シーンが視覚的に描かれています。(映画設定)