満月

満月 (Full Moon) は、魔法界において、特に狼人間 (Werewolf) のライカンスローピー (Lycanthropy) と密接に関連する天体現象です。満月の夜、狼人間は自身の意志とは無関係に、理性を失った凶暴な獣へと強制的に変身させられます。この現象は物語全体、特にリーマス・ルーピンの人生と『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のプロットにおいて中心的な役割を果たします。

満月が狼人間に及ぼす影響は深刻かつ不可避です。

  • 強制的な変身: 満月の光を浴びると、狼人間は痛みを伴う変身を遂げ、人間の姿と理性を失い、完全な狼となります。この変身は本人の意志では制御不可能です。
  • 理性の喪失: 変身後の狼人間は、友人や家族さえも認識できなくなり、近くにいる人間に見境なく襲いかかります。リーマス・ルーピンは、この状態の自分自身を「友人さえも殺しかねない」と述べています。
  • 記憶の欠如: 変身中の出来事について、人間の姿に戻った後も記憶はほとんど残りません。しかし、自分が引き起こしたかもしれない惨事への恐怖と、変身による身体的ダメージは残ります。
  • 対策: 狼毒薬 (Wolfsbane Potion) を満月の一週間前から毎日服用することで、狼人間は変身後も人間の理性を保つことができます。これにより、無害な眠れる狼として一夜を過ごすことが可能になります。この薬は調合が非常に難しく、セブルス・スネイプがルーピンのために調合していました。

満月は狼人間だけでなく、他の魔法的な事象にも影響を与えます。

満月は、物語の重要な転換点や登場人物の背景を明らかにするための装置として機能します。

  • 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』:
  • 狼人間への差別: 満月の夜に制御不能になるという性質は、魔法省による差別的な法律(ドローレス・アンブリッジが起草したものなど)や、社会的な偏見の根源となっています。これにより、ルーピンのような人物は定職に就くことが極めて困難でした。
  • 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』:
    • ビル・ウィーズリーが天文台の塔の戦いでフェンリル・グレイバックに襲われましたが、その時が満月ではなかったため、完全な狼人間にはなりませんでした。しかし、生肉を好むようになるなど、狼に似た性質を一部受け継ぐことになりました。
  • 狼毒薬 (Wolfsbane Potion): 狼人間が変身中に理性を保つことを可能にする複雑な魔法薬。
  • 月齢表 (Lunar Chart): 月の満ち欠けを示す図表。狼人間の変身時期を予測するために不可欠です。