アンティオク・ペベリル

アンティオク・ペベリル (Antioch Peverell) は、魔法界の古い寓話集『吟遊詩人ビードルの物語』に収録されている「三人兄弟の物語」に登場する三兄弟の長男です。彼は伝説の三つの死の秘宝の一つである長老の杖の最初の所有者として知られています。物語の中で、彼は好戦的で権力を渇望する魔法使いとして描かれ、その性格が自身の早すぎる死を招くことになりました。

アンティオクの生涯に関する記述は、ほとんどが「三人兄弟の物語」に基づいています。

• アンティオクは二人の弟、カドマス・ペベリルとイグノタス・ペベリルと共に旅をしていました。ある時、三人は危険な川に差し掛かり、魔法で橋を架けて渡りました。
• 橋の半ばで、彼らは死者を奪われたことに腹を立てた死そのものに遭遇しました。死は彼らを称賛するふりをして、それぞれに褒美を授けることを提案しました。
• 好戦的な性格であったアンティオクは、この世で最も強力な杖、持ち主が決闘で決して負けることのない杖を要求しました。
• 死は近くにあったニワトコの木から杖を作り、アンティオクに与えました。これが長老の杖です。
• 弟たちと別れた後、アンティオクはある村を訪れ、かつて争ったことのある魔法使いを探し出し、決闘を挑みました。長老の杖の力で彼は容易に勝利しました。
• その後、彼は宿屋で酒を飲みながら、死から授かった無敵の杖について大声で自慢しました。
• しかし、その夜、アンティオクが眠っている間に別の魔法使いが宿屋に忍び込み、彼の喉を切り裂いて長老の杖を盗みました。これにより、アンティオクは杖のために命を落とした最初の魔法使いとなり、長老の杖の血塗られた歴史が始まりました。

• 外貌: 原作小説において、アンティオクの外見に関する具体的な記述はありません。
• 性格: 彼は物語の中で明確な性格特性を持つ人物として描かれています。
  • 好戦的: 「三人兄弟の物語」では、彼が 好戦的な男 (a combative man) であったと明記されています。彼の最初の行動が、古い恨みを晴らすための決闘であったことからも、その性格がうかがえます。
  • 傲慢で軽率: 彼は手に入れた絶大な力を隠すことなく、宿屋で自慢話をしたため、自身の命を危険に晒しました。この軽率さが彼の死の直接的な原因となりました。
  • 権力志向: 死からの褒美として、他者を打ち負かすための究極の力を求めたことは、彼の強い権力欲を示しています。

アンティオク自身の魔法の腕前について詳細は不明ですが、弟たちと共に危険な川に魔法で橋を架けることができたことから、彼が非常に熟練した強力な魔法使いであったことは間違いありません。しかし、彼の物語における決闘の勝利は、彼自身の能力よりも長老の杖の比類なき力によるものです。

• 長老の杖 (The Elder Wand)
  • タイプ: 死の秘宝
  • 製造者: 死
  • 概要: 「死の杖」や「宿命の杖」としても知られる、史上最も強力な杖。所有権は前の所有者を打ち負かすことによってのみ移ります。アンティオクは、この杖の最初の所有者であり、最初の犠牲者でもありました。

• カドマス・ペベリル (Cadmus Peverell): 三人兄弟の次男。蘇りの石の最初の所有者。ヴォルデモー卜卿の先祖であるゴーン卜家は彼の血を引いています。
• イグノタス・ペベリル (Ignotus Peverell): 三人兄弟の三男。透明マントの最初の所有者。ハリー・ポッターの父方の先祖です。
• 子孫: アンティオクに妻子がいたか、子孫がいたかについては、物語の中で言及されていません。

• アンティオク (Antioch): シリアに存在した古代都市「アンティオキア」に由来する名前です。この都市は歴史上、多くの紛争や権力闘争の舞台となりました。これはアンティオクの「好戦的な」性格と響き合います。
• ペベリル (Peverell): 英国に実在する古いノルマン系の姓であり、一族の古くからの由緒ある血筋を暗示しています。

• アルバス・ダンブルドアは、「三人兄弟の物語」は寓話であるものの、ペベリル兄弟が実在した極めて強力で才能ある魔法使いであり、彼らが自ら死の秘宝を創り出した可能性が高いと推測しています。
• 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、「三人兄弟の物語」が独特の影絵のようなアニメーションで描かれ、アンティオクの姿も視覚的に表現されました。(映画版設定)