イグノタス・ペベリル

イグノタス・ペベリルは、13世紀に生きた純血の魔法使いであり、有名な「三人兄弟の物語」に登場する三人のペベリル兄弟の末弟です。物語の中で、彼は最も謙虚で賢明な人物として描かれ、死の秘宝の一つである隠れマントの最初の所有者となりました。彼はハリー・ポッターの父方の直系の祖先であり、その血筋を通じて隠れマントポッター家に代々受け継がれました。

イグノタス・ペベリルの生涯に関する情報のほとんどは、吟遊詩人ビードルの物語に収められている「三人兄弟の物語」に由来します。伝説によれば、イグノタスと彼の二人の兄、アンティオク・ペベリルカドマス・ペベリルは、旅の途中で危険な川を渡るために魔法で橋を架けました。その時、彼らの行く手を阻んだそのものが現れ、彼らの魔法に感心したふりをして、それぞれに望む褒美を一つずつ与えると言いました。 長兄アンティオクは最強の杖であるニワトコの杖を、次兄カドマスは死者を呼び戻す力を持つ蘇りの石を求めました。しかし、イグノタスはを信用せず、「ここから立ち去る時、あなたに追跡されないための何か」を求めました。しぶしぶは自身のマントの一部を切り取り、彼に渡しました。それが、所有者の姿を完全に見えなくする隠れマントでした。 兄たちが死の秘宝を手に入れたことで悲劇的な運命を辿ったのとは対照的に、イグノタスは隠れマントを賢明に使い、から身を隠して長い人生を送りました。非常に高齢になった時、彼は自らマントを脱いで息子に譲り、旧友を迎えるようにと対面し、喜んで共にこの世を去ったとされています。 イグノタスは、ハリー・ポッターの両親も埋葬されているゴドリックの谷の墓地に埋葬されています。彼の墓石には、死の秘宝のシンボルが刻まれており、1997年にハリー・ポッターハーマイオニー・グレンジャーによって発見されました。

イグノタスの具体的な外見に関する記述は原作にはありません。しかし、彼の性格は「三人兄弟の物語」における行動から明確にうかがえます。

  • 謙虚さ (Humility): 彼は兄たちのように力を誇示したり、自然の法則に逆らったりするような願い事をしませんでした。彼の願いは、支配や復活ではなく、平穏に生きることでした。
  • 賢明さ (Wisdom): 彼はの策略を見抜き、その誘惑に乗りませんでした。彼の選択は、死を打ち負かすことではなく、死を避け、自然な寿命を全うすることであり、これが彼の賢明さを示しています。アルバス・ダンブルドアは、三人の兄弟の中でイグノタスが最も賢明であったと評価しています。

イグノタスは、死の秘宝を作り出した(あるいはから授かった)とされるほど、非常に強力で才能ある魔法使いであったと考えられています。アルバス・ダンブルドアは、ペベリル兄弟がと出会ったという話は伝説であり、彼らが非常に優れた魔法使いで、自らこれらの強力な魔法の品々を創造した可能性が高いと推測しています。彼が所有していた隠れマントは、通常の姿くらまし術や他の透明マントとは比較にならないほど強力で、何世紀にもわたってその効力を失うことがありませんでした。

  • イグノタス (Ignotus): ラテン語で「知られていない」「無名の」を意味する ignotus に由来します。これは、から身を隠し、知られることなく静かに生涯を終えたいという彼の願いと完全に一致しています。
  • ペベリル (Peverell): イギリスに実在する中世の古い姓です。この名前は、物語に歴史的な深みと由緒ある魔法族の血統という印象を与えています。
  • J.K. ローリングは、ペベリル兄弟が「三人兄弟の物語」のモデルになった実在の人物であったと述べています。つまり、彼らが実際に強力な魔法使いであり、死の秘宝を自ら作り出したのであって、物語が先にあったわけではないということです。(Pottermore)
  • 「三人兄弟の物語」は、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』に含まれる「免罪符売りの話」と多くの類似点が見られます。
  • 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、「三人兄弟の物語」が独特の影絵のようなアニメーションで描かれ、イグノタスの姿もそこで視覚化されています。(映画設定)