ジェームズ・ポッター

ジェームズ・ポッターは、ハリー・ポッターの父親であり、リリー・ポッターの夫です。グリフィンドール寮出身の純血の魔法使いで、不死鳥の騎士団の最初のメンバーの一員でした。学生時代は親友のシリウス・ブラックリーマス・ルーピンピーター・ペティグリューと共に「いたずら仕掛け人」として知られ、非合法の動物もどき(牡鹿)となって「尖がり角 (Prongs)」というあだ名で呼ばれました。ヴォルデモート卿から家族を守るために勇敢に戦い、若くして命を落としました。彼の死は、物語全体を通じて息子ハリーのアイデンティティと運命に深い影響を与え続けます。

ジェームズは1971年にホグワーツ魔法魔術学校に入学し、グリフィンドール寮に組分けされました。そこで生涯の友となるシリウス・ブラックリーマス・ルーピン、そして後に彼を裏切ることになるピーター・ペティグリューと出会います。彼ら4人は「いたずら仕掛け人」として知られ、共同で忍びの地図を作成しました。友人のリーマスが人狼であることを知ると、ジェームズは彼を支えるために、シリウス、ピーターと共に非合法で動物もどきになるという困難な魔法を習得しました。彼の変身形態は牡鹿であり、これは息子のハリーが用いる守護霊の呪文の形態と一致します。 学生時代のジェームズは、才能豊かで人気者である一方、特にセブルス・スネイプに対しては傲慢でいじめっ子としての一面も持っていました。彼はクィディッチの優秀なチェイサーであり、後に監督生 (Head Boy) にも選ばれています。当初、リリー・エバンズは彼の傲慢さを嫌っていましたが、ジェームズが成熟するにつれて二人は恋に落ちました。

ホグワーツ卒業後、ジェームズはリリーと結婚し、アルバス・ダンブルドアが率いる最初の不死鳥の騎士団に加わり、ヴォルデモート卿とその死喰い人たちと三度にわたって戦いました。息子ハリー・ポッターが生まれた後、ポッター家はシビル・トレローニーの予言によりヴォルデモートの標的となります。 一家はゴドリックの谷に隠れ、忠誠の呪文によって身を守ろうとしました。当初、秘密の守人 (Secret-Keeper) はシリウス・ブラックになる予定でしたが、彼の提案により、より目立たないと考えられたピーター・ペティグリューに変更されました。しかし、ペティグリューはヴォルデモートのスパイであり、ポッター家の隠れ場所を密告しました。 1981年10月31日、ヴォルデモート卿が彼らの家を襲撃しました。ジェームズは杖を持たないままヴォルデモートに立ち向かい、リリーとハリーが逃げるための時間を稼ごうとしましたが、殺害されてしまいます。彼の自己犠牲は、後にリリーがハリーに古代の愛の守りを与えるための重要な時間的猶予となりました。 死後、彼の魂はヴォルデモート卿の杖から「優先呪文」の効果によって一時的に現れ、ハリーを助けました。また、ハリーが蘇りの石を使った際にも、リリーやシリウス、リーマスと共に再び姿を現し、彼を励ましました。

ジェームズは、背が高く痩せ型で、父から息子へと受け継がれた扱いにくい黒髪が後ろで逆立っているのが特徴でした。ハシバミ色の瞳を持ち、丸い眼鏡をかけていました。ハリー・ポッターは、母親の緑の瞳を除いて、外見が父親に瓜二つであると多くの人物から評されています。 彼の性格は複雑です。若き日は非常に賢く才能に恵まれていたものの、自信過剰で傲慢な一面があり、特にスネイプを公然と辱めることを楽しんでいました。しかし、友人であるシリウス・ブラックリーマス・ルーピンによれば、彼は根底では非常に勇敢で、友人と家族に対する忠誠心が篤い人物でした。ホグワーツの最終学年には大きく成熟し、その傲慢さは影を潜めたとされています。最終的に、彼は家族を守るために命を投げ出す、深い愛情を持った人物となりました。

  • 動物もどき (Animagus): 彼は学生時代に牡鹿(a stag)に変身する動物もどきとなりました。これは非常に高度で複雑な魔法であり、彼の優れた魔法の才能を示しています。
  • 決闘 (Dueling): 非常に熟練した決闘者であり、不死鳥の騎士団の一員として死喰い人と何度も渡り合った実力者です。
  • 呪文の才能 (Charms): 忍びの地図の共同制作者であることから、極めて高度で独創的な呪文学の知識を持っていたことがうかがえます。
  • 守護霊の呪文 (Patronus Charm): 彼の守護霊は牡鹿であり、彼の動物もどきの形態と一致します。この守護霊は、息子のハリーにも受け継がれました。
  • 杖 (Wand): 11インチ、マホガニー製、しなやか。 変身術に適しているとされます。
  • リリー・ポッター (旧姓エバンズ): ジェームズが深く愛した妻。彼の人生と性格に最も大きな影響を与えた人物です。
  • ハリー・ポッター: 彼の一人息子。ジェームズは息子の命を守るために死を選びました。
  • シリウス・ブラック: ホグワーツ時代からの親友で、兄弟のような存在でした。シリウスはハリーの名付け親でもあります。
  • リーマス・ルーピン: 親友の一人。ジェームズは彼が人狼であることに偏見を持たず、常に支え続けました。
  • ピーター・ペティグリュー: かつての友人でしたが、最終的にポッター家を裏切り、彼らの死を招いた張本人です。
  • セブルス・スネイプ: 学生時代からの宿敵。ジェームズはスネイプをいじめていましたが、この敵対関係はスネイプの人生に暗い影を落とし、物語の重要な伏線となりました。
  • ジェームズ (James): 伝統的なヘブライ語由来の英語名で、「取って代わる者」を意味します。英国では非常に一般的な名前です。
  • ポッター (Potter): 英語圏で一般的な職業姓で、「陶工」を意味します。作者は、近所に住んでいたポッターという名前の家族が好きだったと語っています。(作者インタビュー)
  • J.K. ローリングは、ジェームズの杖の芯材であるマホガニーが、リリーの柳の杖と相性が良いと述べています。(Pottermore)
  • 映画版では、大人のジェームズ・ポッターをエイドリアン・ローリンズが、学生時代をロビー・ジャーヴィスが演じています。
  • 映画版では、複数の登場人物がハリーに対して「父親の目を持っている」と語る場面がありますが、これは原作の「母親の緑の瞳を受け継いだ」という有名な設定とは異なります。(映画版設定)