セブルス・スネイプ

セブルス・スネイプは、ホグワーツ魔法魔術学校の魔法薬学教授であり、スリザリン寮の寮監、後に闇の魔術に対する防衛術教授および校長を務めた人物である。物語の大部分においてハリー・ポッターに対する敵役として描かれるが、その真の姿はリリー・エバンズへの愛のためにアルバス・ダンブルドア側についた二重スパイであり、ヴォルデモート卿の打倒に不可欠な役割を果たした、極めて複雑で悲劇的な英雄である。

スネイプは魔女のアイリーン・プリンスとマグルのトビアス・スネイプの間に生まれた半純血の魔法使いである。彼はマグルの町、スピナーズ・エンドで育ち、両親の絶え間ない喧嘩により、愛情に乏しい孤独な幼少期を送った。近所に住んでいたリリー・エバンズとペチュニア・エバンズに出会い、リリーが魔女であることを見抜くと、彼は彼女に魔法界の存在を教え、二人は親友となった。スネイプはリリーに深い愛情を抱くようになった。

ホグワーツ魔法魔術学校に入学したスネイプは、組分け帽子によってスリザリン寮に組分けされた。彼は特に魔法薬学と闇の魔術に並外れた才能を示し、教科書の余白に自作の呪文（セクタムセンプラなど）や魔法薬の改良法を書き込んでいた。この教科書には、母の旧姓「プリンス」にちなんで自らを「半純血のプリンス」(Half-Blood Prince)と記している。 学生時代、彼はグリフィンドール寮のジェームズ・ポッターとその友人たち（「いたずら仕掛け人」）から執拗ないじめを受けており、これがジェームズへの生涯にわたる憎しみの原因となった。5年生の時、ジェームズに辱められた際に、彼は思わずリリーを「穢れた血」(Mudblood)と罵ってしまい、二人の友情は決定的に終わりを告げた。この出来事はスネイプに深い後悔と心の傷を残し、彼は闇の魔術と、後に死喰い人となるスリザリンの仲間たちへと傾倒していった。

ホグワーツ卒業後、スネイプは死喰い人 (デスイーター) となり、ヴォルデモート卿に仕えた。彼がシビル・トレローニーの予言の一部を盗み聞きし、ヴォルデモートに報告したことが、ポッター家が標的とされる直接的な原因となった。しかし、リリーが危険に晒されていると知ったスネイプは恐怖に駆られ、アルバス・ダンブルドアに助けを求めた。リリーの命を救うためなら何でもすると誓い、彼は不死鳥の騎士団側のスパイとなった。

ヴォルデモートの復活後、スネイプはダンブルドアの指示により再び死喰い人の中に潜入し、二重スパイとしての危険な役割を続けた。彼はハリーを憎むジェームズの面影と、愛したリリーの面影（特にその瞳）との間で葛藤しながらも、ダンブルドアとの誓いに基づき、陰ながらハリーを守り続けた。 6年目の終わりに、彼はダンブルドア自身の計画と依頼に基づき、アバダ・ケダブラの呪文でダンブルドアを殺害した。これは、ドラコ・マルフォイの魂を救い、スネイプがヴォルデモートの絶対的な信頼を得るための、二人だけの計画であった。 ヴォルデモートの支配下でホグワーツの校長に就任した後も、彼は生徒たちを可能な限り守り、ハリーたちがグリフィンドールの剣を見つけられるよう、自らの守護霊を使って密かに導いた。

ホグワーツの戦いの最中、スネイプはニワトコの杖の真の所有者であると信じたヴォルデモートによって、彼の蛇ナギニに殺害された。死の間際に、彼はハリーに自らの記憶を託し、その記憶を通してハリーはスネイプの真の動機、リリーへの生涯をかけた愛、そして彼が影の英雄であったことのすべてを知った。

脂ぎった黒髪を肩まで伸ばし、不健康そうな青白い肌、大きな鉤鼻、そして冷たく虚ろな黒い瞳が特徴。常に黒一色のローブを身につけており、その姿はしばしば「巨大なコウモリ」と形容される。

皮肉屋で冷酷、執念深く、特にハリー・ポッター、ネビル・ロングボトム、ハーマイオニー・グレンジャーといった生徒に対しては、しばしば不公平で意地悪な態度をとった。しかし、その冷たい仮面の下には、驚くべき勇気、類まれな知性、そしてリリー・エバンズへの揺るぎない深い愛情を隠し持っていた。彼の行動はすべて、リリーの死に対する罪悪感と彼女への愛によって動機づけられており、非常に複雑で多面的な人物である。

• 魔法薬学 (Potions): 天才的な才能を持つ達人であり、学生時代から既存の調合法を改良するほどの腕前だった。
• 闇の魔術 (Dark Arts): 非常に深い知識と実践能力を持つ。セクタムセンプラのような独自の呪文を開発した。
• 閉心術と開心術 (Occlumency and Legilimency): 魔法界で最も熟練した閉心術士の一人であり、長年にわたりヴォルデモート卿の精神的な侵入を完全に防ぎきった。また、熟練した開心術士でもある。
• 決闘 (Dueling): 非常に有能な決闘者であり、多くの強力な魔法使いと渡り合った。
• 無言呪文 (Non-verbal Spells): 無言呪文に非常に長けており、頻繁に使用した。
• 飛行 (Unsupported Flight): ヴォルデモートから学んだと思われる、箒なしで飛行する稀有な能力を持っていた。
• 守護霊の呪文 (Patronus Charm): 彼の守護霊は牝鹿 (doe) であり、これはリリー・エバンズの守護霊と同じ姿である。彼の変わらぬ愛の象徴である。

• 『上級魔法薬』の教科書 (Advanced Potion-Making Textbook): スネイプが学生時代に使用していた教科書。中には彼自身による数多くの書き込み、呪文の創作（「敵に対して」と書かれたセクタムセンプラなど）、調合手順の改良が記されており、「半純血のプリンス」の署名がある。

• リリー・エバンズ (後のリリー・ポッター): スネイプの生涯で唯一愛した女性であり、幼馴染。彼女との関係の破綻と彼女の死が、彼のその後の人生すべてを決定づけた。
• アルバス・ダンブルドア: スネイプの真の忠誠を知る唯一の人物であり、彼の保護者であり指導者。二人の間には、信頼と必要性に基づいた複雑な協力関係があった。
• ハリー・ポッター: スネイプにとって、憎きジェームズ・ポッターの写し鏡であると同時に、愛したリリーの忘れ形見（特にその瞳）でもあった。リリーへの愛ゆえにハリーを守り、ジェームズへの憎しみゆえに彼を虐げた。
• ジェームズ・ポッター: 学生時代の宿敵であり、スネイプをいじめていた相手。スネイプは彼を心底軽蔑していた。
• ヴォルデモート卿: スネイプが仕え、欺き、そして最終的に打倒に貢献した闇の帝王。ヴォルデモートは最後までスネイプの裏切りに気づかなかった。

• セブルス (Severus): ラテン語で「厳格な」「厳しい」を意味し、彼の性格を的確に表している。また、ローマ皇帝ルキウス・セプティミウス・セウェルスとの関連も考えられる。
• スネイプ (Snape): イギリスに実在する村の名前。J.K. ローリングは、道路標識からこの名前を借用したと語っている。

• 著者 J.K. ローリングは、シリーズ第一作を執筆する前から、スネイプの過去、リリーへの愛、そして彼の真の忠誠心といった物語の根幹に関わる設定をすべて計画していた。
• 映画でスネイプを演じた俳優アラン・リックマンに対し、ローリングは彼の役作りの助けとなるよう、早い段階で「スネイプがリリーを愛していた」という重要な秘密を明かしていた。（作者のインタビューより）
• ドラコ・マルフォイの名付け親 (ゴッドファーザー) であるという設定は原作には明記されていないが、映画でそのように描かれている。（映画設定）