ペベレル三兄弟

ペベレル三兄弟は、13世紀に生きたとされる伝説的な三人の魔法使いの兄弟です。長男アンティオコス・ペベレル (Antioch Peverell)、次男カドマス・ペベレル (Cadmus Peverell)、三男イグノタス・ペベレル (Ignotus Peverell) から構成されます。彼らは魔法界の童話集『吟遊詩人ビードルの物語』に収録されている寓話「三兄弟の物語」の主人公として知られており、死の秘宝として知られる三つの強力な魔法の品々の最初の所有者でした。 彼らの血筋は物語の根幹に深く関わっており、ポッター家ゴーント家の双方の祖先であることから、結果的にハリー・ポッターヴォルデモート卿は彼らを通じて遠い血縁関係にあります。

ペベレル三兄弟に関する具体的な歴史的記録はほとんど残っていませんが、彼らの生涯は主に「三兄弟の物語」を通じて語り継がれています。この物語は寓話である可能性が高いとされていますが、アルバス・ダンブルドアは、兄弟が実在し、死の秘宝を自ら作り出した極めて有能な魔法使いであったと推測しています。

伝説によれば、三兄弟は旅の途中、死者が多発する危険な川にたどり着きました。彼らは魔法で橋を架けて川を渡り、本来ならば川の犠牲になるはずだった彼らの命を奪い損ねたを出し抜きました。 は彼らの魔法に感心したふりをして現れ、褒美として望むものを一つずつ与えることを申し出ました。

  • アンティオコス・ペベレル: 好戦的な長男は、誰にも負けない史上最強の杖を望みました。は近くにあったニワトコの木から杖を作り、彼に与えました。これがニワトコの杖です。アンティオコスは手に入れた杖の力で長年の宿敵を打ち負かしましたが、その夜、杖の力を自慢したことが仇となり、眠っている間に別の魔法使いに殺害され、杖を奪われました。彼はが最初に手に入れた魂となりました。
  • カドマス・ペベレル: 横柄な次男は、をさらに辱める力を望み、死者を呼び戻す力を求めました。は川岸の石を拾い、彼に与えました。これが蘇りの石です。カドマスは若くして亡くなった婚約者を呼び戻しましたが、彼女は悲しげで冷たく、もはや現世の者ではありませんでした。絶望したカドマスは、彼女と真に結ばれるために自ら命を絶ちました。彼はが手に入れた二番目の魂となりました。
  • イグノタス・ペベレル: 謙虚で賢い三男はを信用せず、に追われることなくその場を立ち去るためのものを求めました。はしぶしぶと自身のマントの一部を切り取り、彼に与えました。これが透明マントです。はマントを纏ったイグノタスを見つけることができず、彼は長年にわたりから逃れ続けました。天寿を全うした彼は、自らマントを脱いで息子に譲り渡し、旧友を迎えるようにと共に対等な立場でこの世を去りました。

原作において三兄弟の具体的な外見に関する記述はありません。「三兄弟の物語」における彼らの行動から、以下のような性格が示唆されています。

  • アンティオコス: 力を求め、暴力的で好戦的な性格。
  • カドマス: 死者への愛情を持つ一方で、傲慢でを支配しようとする性格。
  • イグノタス: 謙虚で、の力を理解し、それに対抗するのではなく受け入れる知恵を持つ性格。

三兄弟が実在の人物であったというアルバス・ダンブルドアの説に基づけば、彼らは並外れて強力で才能豊かな魔法使いであったことは間違いありません。

  • 高度な魔法: 危険な川に一瞬で橋を架けるほどの高度な魔法を行使しました。
  • 死の秘宝の創造: ニワトコの杖蘇りの石透明マントという、後世に類を見ない強力な魔法の品々を創造したとされることから、彼らの魔法道具作成の技術は歴史上でも最高レベルであったと考えられます。

彼らは死の秘宝として知られる三つの伝説的な品々の最初の所有者です。

  • ニワトコの杖 (The Elder Wand): アンティオコスの所有物。所有者を次々と変え、血塗られた歴史を辿りました。
  • 蘇りの石 (The Resurrection Stone): カドマスの所有物。彼の死後、ゴーント家に代々受け継がれ、最終的に指輪にはめ込まれました。
  • 透明マント (The Invisibility Cloak): イグノタスの所有物。唯一、所有者を裏切ることなく正しく継承され、ポッター家の家宝としてハリー・ポッターの手に渡りました。
  • J.K.ローリングは、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』に登場する「免罪符売りの話」が、「三兄弟の物語」のインスピレーション源の一つであることを認めています。この話でも、三人の若者がを打ち負かそうと試み、結果的に互いを殺し合うことになります。(J.K.ローリングによる言及)
  • 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、「三兄弟の物語」が影絵のような独特のアニメーションで表現され、非常に高い評価を得ています。(映画設定)
  • 死の秘宝のシンボルマークは、かつて闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドが自身の印として使用していたため、ビクトール・クラムを含む多くの魔法使いに誤解されていました。