姿くらまし術

  • 英語名称 (English Name): Apparition (移動術そのものを指す) / Disapparition (消える行為) / Apparate (現れる行為)
  • 呪文 (Incantation): 無言呪文 (Non-verbal)
  • 効果 (Effect): 術者をある場所から別の場所へ即座に移動させる、魔法によるテレポート。

姿くらまし術は、魔法使いや魔女が意志の力だけで瞬時に長距離を移動するための高度な魔法です。この術を行使すると、術者は出発点で「姿を消し (Disapparate)」、目標地点で「姿を現し (Apparate)」ます。移動は一瞬で完了し、多くの場合、大きな「パン!」という破裂音を伴います。しかし、アルバス・ダンブルドアのような極めて熟練した魔法使いは、ほとんど音を立てずにこの術を使うことができます。 この術を成功させるには、術者は3つのD、すなわち目的地 (Destination)決意 (Determination)熟慮 (Deliberation) に精神を集中させる必要があります。少しでも集中が乱れると、術は失敗し、極めて危険な「惨事 (Splinching)」を引き起こす可能性があります。 主な用途は迅速な移動であり、成人した魔法使いにとっては日常的な移動手段の一つです。また、他者を連れて移動する「二人現姿 (Side-Along Apparition)」も可能で、その際は同伴者が術者の体にしっかりと触れている必要があります。 作中では、ハリー・ポッターロン・ウィーズリーハーマイオニー・グレンジャーヴォルデモート卿から逃亡する際に頻繁に使用されました。また、不死鳥の騎士団のメンバーが緊急時に集結する際や、死喰い人が奇襲をかける際にも用いられました。

姿くらまし術は習得が非常に難しい魔法であり、魔法省によって厳しく規制されています。

  1. 受験資格: 満17歳(魔法界の成人年齢)に達した者のみが、姿くらまし術の免許試験を受けることができます。
  • 危険性: 学習過程で最も注意すべきは「惨事 (Splinching)」です。これは、術の失敗により体の一部が出発点に取り残されてしまう現象を指します。作中では、スーザン・ボーンズが足の一部を、ロン・ウィーズリーが腕の一部を置き去りにする惨事を起こしました。惨事は激しい痛みを伴いますが、適切な魔法処置によって治療可能です。
  • 対抗策: 特定の場所では、姿くらまし防止呪文がかけられており、その範囲内では姿くらまし術が使えません。ホグワーツの敷地全体がその代表例であり、生徒や教職員の安全を確保し、外部からの侵入を防いでいます。この防御呪文は、必要に応じて一時的に解除することも可能です。
  • Apparition: 英語の「Apparition」は、ラテン語の「apparere」(現れる)に由来します。一般的には「幽霊」や「幻影」といった、突然現れる超自然的な存在を指す言葉であり、この魔法の「忽然と現れる」性質を表しています。
  • 姿くらまし術: 日本語の名称は非常に直訳的です。「姿 (sugata)」は人の形や外見、「くらまし (kuramashi)」は「くらます(隠す、行方を分からなくする)」という動詞の名詞形、「術 (jutsu)」は技術や方法を意味します。つまり、「自分の姿を消し去る技術」という意味合いになります。
  • 映画版では、姿くらまし術が視覚的に表現されています。死喰い人は黒い煙のような軌跡を残しながら移動し、不死鳥の騎士団のメンバーは白い煙のような軌跡で描かれることが多くあります。これは書籍にはない、映画独自の演出です。(映画版の設定)
  • 屋敷しもべ妖精も独自の移動魔法を使いますが、これは魔法使いの姿くらまし術とは異なり、ホグワーツのような強力な防御呪文がかけられた場所でも自由に出入りが可能です。ドビーマルフォイの館からハリーたちを救出した場面がその好例です。