狼人間用の薬は、完成するとかすかに青い煙を放つ液体です。その味は極めて不快であるとリーマス・ルーピンは述べており、彼は服用しやすくするために砂糖を加えていました。しかし、セブルス・スネイプは、砂糖を加えることは調合を損なう可能性があるとして、この行為を認めていませんでした。 この薬の調合は非常に複雑で難易度が高く、材料も高価であるため、熟練した魔法薬の専門家でなければ作ることができません。
狼人間用の薬は、狼人間を完全に治療するものではありません。その主な効果は、満月の夜に変身した狼人間が理性を失うのを防ぎ、人間の精神を保たせることにあります。この薬を正しく服用した狼人間は、危険な怪物ではなく、落ち着いて無害な狼の姿になります。リーマス・ルーピンによれば、この状態の彼は「自分の書斎で静かに丸くなって、月が欠けるのを待つ」ことができるとされています。 この薬の効果を最大限に発揮させるためには、満月へ至る一週間の間、毎日欠かさず服用しなければなりません。もし一度でも服用を怠ると、薬は効果を失い、その月の変身は通常通り、理性を失った危険な状態で行われます。
この画期的な魔法薬は、魔法薬学者のダモクレス・ベルビーによって発明されました。彼はホラス・スラグホーンの元教え子の一人です。この発明は比較的新しいものであり、狼人間が社会に与える脅威を大幅に軽減する可能性を秘めていました。 1993年から1994年にかけて、リーマス・ルーピンがホグワーツ魔法魔術学校で闇の魔術に対する防衛術の教授を務めていた際、アルバス・ダンブルドアの指示により、セブルス・スネイプが彼のためにこの薬を定期的に調合していました。これは、スネイプの並外れた魔法薬学の腕前を示す証拠でもあります。
この薬は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』において、物語の重要な要素として機能します。 第一に、リーマス・ルーピンが狼人間であることを隠しながら教職を続けられる理由として提示されます。第二に、セブルス・スネイプがルーピンのためにこれを調合する事実は、スネイプとルーピン、そして「忍びの地図」の作成者たちとの間の複雑な過去の関係性を浮き彫りにします。 物語のクライマックスで、ルーピンはシリウス・ブラックとピーター・ペティグリューに対峙するため叫びの屋敷へ急ぐあまり、その夜の分の薬を飲み忘れてしまいます。その結果、彼は満月の下で理性を失った狼人間へと変身してしまい、大混乱を引き起こします。この混乱の隙にピーター・ペティグリューは逃亡し、後のヴォルデモート卿の復活へと繋がる重要な転機となりました。