愛の守り

  • 発動条件 (Activation Condition): 愛する者を守るため、自らの命を犠牲にすること。攻撃者から死の呪いをかけられた際に、防御の機会がありながらもそれを放棄し、身を挺して標的を守ることで発動する。
  • 主な効果 (Primary Effects):
    • 攻撃者がかけた死の呪いを跳ね返す。
    • 保護対象者の身体に、攻撃者が直接触れることを困難にする強力な防御を付与する。
    • 血縁関係を通じて、長期的な保護結界を形成する。
  • 備考 (Notes): この魔法は特定の呪文、杖の動き、光の色を伴わない。愛という根源的な力に基づく、最も強力な魔法の一つである。

「愛の守り」は、物語の根幹をなす極めて重要な魔法です。その最も著名な例は、リリー・ポッターが息子ハリー・ポッターヴォルデモート卿から守るために命を捧げた際に発動しました。

  • リリー・ポッターの犠牲: 1981年10月31日、ヴォルデモート卿がポッター家を襲撃した際、リリー・ポッターハリー・ポッターの前に立ちはだかり、命乞いを退けて殺害されました。この自己犠牲の愛が強力な防御魔法となり、ヴォルデモート卿がハリーに放った死の呪いアバダ・ケダブラ)を跳ね返しました。その結果、ヴォルデモート卿は肉体を失い、ハリー・ポッターは額に稲妻形の傷だけを残して生き残りました。この傷は、意図せずしてヴォルデモートの魂の一部を宿す分霊箱となりました。
  • プリベット通りの保護: アルバス・ダンブルドアはこの古代魔法をさらに応用しました。彼はハリーを唯一の血縁者である叔母、ペチュニア・ダーズリーの元へ預けました。リリーの血が流れるペチュニアがハリーを「家族」として受け入れ、彼女の家をハリーが「家」と呼べる限り、リリーの血の守りが強化され、ヴォルデモート卿とその手下たちがハリーに危害を加えることができない強力な結界が張られました。この保護は、ハリーが17歳になるか、プリベット通り4番地を永久に「家」と呼ばなくなった時点で失効するとされていました。
  • クィレルとの対峙: 1年生の終わり、ハリー・ポッター賢者の石を守るためにクィリナス・クィレル教授と対峙した際、この魔法の直接的な効果が示されました。ヴォルデモート卿に憑依されていたクィレルは、ハリーの肌に触れた途端、激しい痛みと共に火傷を負い、最終的に肉体が崩壊しました。これは、リリーの愛による守りがハリーの身体に宿り、ヴォルデモートの存在を拒絶したためです。
  • ヴォルデモートによる利用とその誤算: 4年生の終わり、ヴォルデモート卿は復活の儀式にハリーの血を使いました。これにより、彼はリリーの守りを自らの体内に取り込み、ハリーに直接触れても苦痛を感じなくなりました。しかし、これは彼の最大の誤算でした。アルバス・ダンブルドアが後に説明したように、リリーの守りがヴォルデモートの血の中にも流れる限り、ハリーはヴォルデモートが生きている限り死ぬことができなくなったのです。この血の繋がりが、ハリーを現世に繋ぎとめる命綱の役割を果たしました。
  • ハリー・ポッターの犠牲: ホグワーツの戦いの最終局面で、ハリー・ポッターは仲間たちを守るため、自らの意志で禁じられた森へ赴き、ヴォルデモート卿に殺されることを受け入れました。この母親の行動をなぞる自己犠牲は、ホグワーツの防衛者たち全員に「愛の守り」をかけました。その結果、ヴォルデモート卿が彼らにかけた呪文(拘束呪や沈黙呪など)は効果を失い、彼の支配力は著しく弱体化しました。
  • 性質: この魔法は、ヴォルデモート卿のような愛を理解できず、力を過信する闇の魔法使いにとっては、全く理解不能な力です。彼は何度もこの魔法の力を過小評価し、その結果敗北を喫しました。これは、「愛よりも強力な魔法はない」というシリーズ全体の中心的なテーマを象徴しています。
  • 限界:
    • 血縁による保護: プリベット通りの保護は、ハリーが成人する17歳で失効する時限的なものでした。
    • 直接接触の防御: ヴォルデモート卿がハリーの血を取り込んだことで、彼がハリーに触れることを妨げる効果は無効化されました。
    • 普遍性: この魔法は、特定の状況下で特定の人物を守るために発動するものであり、普遍的な防御呪文としていつでも使えるわけではありません。
  • J.K. ローリングはインタビューなどで、愛がシリーズ全体を貫く最も強力な魔法であると繰り返し述べています。リリーの犠牲による「愛の守り」は、このテーマの最初の、そして最も明確な現れです。(作者談)