クィリナス・クィレル

クィリナス・クィレル (Quirinus Quirrell) は、ホグワーツ魔法魔術学校の元教授であり、『ハリー・ポッターと賢者の石』における主要な敵対者です。彼は当初、臆病で吃音のある闇の魔術に対する防衛術の教師として登場しましたが、その正体はヴォルデモート卿に体を乗っ取られ、賢者の石を狙う死のしもべでした。彼の物語は、ヴォルデモート卿の復活への最初の企てと、リリー・ポッターがハリー・ポッターに残した愛の守りの力の強さを示す上で、極めて重要な役割を果たしました。

クィレルは聡明な魔法使いで、ホグワーツ魔法魔術学校在学中はレイブンクロー寮に所属していました (Pottermore)。卒業後はマグル学の教授となりましたが、闇の魔術に対する理論的な興味と、周囲から軽んじられているという劣等感から、力を求めて旅に出ることを決意します。彼は偉大な力を手に入れ、誰にも無視されない存在になることを願い、弱体化したヴォルデモート卿が潜んでいると噂されるアルバニアの森へと向かいました。

アルバニアでヴォルデモート卿の霊体と遭遇したクィレルは、当初は闇の帝王から何かを学ぼうと考えていましたが、彼の意志はヴォルデモート卿の強大な力の前ではあまりにも脆弱でした。ヴォルデモート卿はクィレルの体を乗っ取り、一時的な分霊箱のように利用し始めました。ヴォルデモート卿はクィレルの後頭部に憑依し、これを隠すためにクィレルは常に大きな紫色のターバンを巻くことを余儀なくされました。

ヴォルデモート卿の指示の下、クィレルは1991年にホグワーツ魔法魔術学校に戻り、闇の魔術に対する防衛術の教授に就任します。これは賢者の石を盗み出すための潜入任務でした。

• グリンゴッツへの侵入: 1991年7月31日、ヴォルデモート卿の命令で賢者の石が保管されていた713番金庫に侵入しますが、その日のうちにルビウス・ハグリッドによって石が運び出された後でした。
• トロールの侵入: ハロウィーンの夜、クィレルは3階の廊下を守る三頭犬のフラッフィーをやり過ごすための陽動として、地下牢にトロールを侵入させました。しかし、この企てはセブルス・スネイプに感づかれ、阻止されます。
• クィディッチ試合での妨害: 最初のクィディッチの試合中、クィレルは観客席からハリー・ポッターの箒に強力な呪いをかけ、殺害しようと試みました。しかし、スネイプが反対呪文を唱えて妨害したため、失敗に終わりました。
• 禁じられた森での暗躍: ヴォルデモート卿の生命力を維持するため、クィレルは禁じられた森でユニコーンを殺し、その血を飲んでいました。

物語のクライマックスで、クィレルはみぞの鏡の隠された部屋にたどり着き、ハリー・ポッターと対峙します。彼は自らの正体と、後頭部に憑依したヴォルデモート卿の顔を明らかにしました。ヴォルデモート卿の命令でハリーから賢者の石を奪おうとしますが、リリー・ポッターの自己犠牲による愛の守りが宿るハリーの肌に触れた瞬間、クィレルの体は激しく焼けただれ始めます。耐え難い苦痛の末に彼の体は灰と化し、宿主を失ったヴォルデモート卿の霊体は彼の亡骸から逃げ去りました。

クィレルは青白い顔をした神経質そうな若者として描かれています。彼は常に大きな紫色のターバンを巻いており、そこからはニンニクの強い匂いがするとされていました。これは吸血鬼を追い払うためだと彼は主張していましたが、真の目的は後頭部に寄生するヴォルデモート卿の顔を隠すためでした。

• 偽りの姿: 彼は吃音で絶えずおどおどしており、非常に臆病な人物を演じていました。これは他者を欺き、誰も自分を脅威と見なさないようにするための策略でした。
• 本来の姿: 彼の本質は野心的で知的な魔法使いでしたが、精神的には脆弱でした。彼はヴォルデモート卿の真の信奉者ではなく、力を求めた結果、より強大な意志に支配されてしまったのです。アルバス・ダンブルドアは、彼の魂には「かすかな善のかけら」が残っていたかもしれないと示唆しています。

• 闇の魔術: クィレルは闇の魔術に精通していました。彼は無言呪文でハリー・ポッターの箒に呪いをかけることができ、またユニコーンを殺害する能力も持っていました。
• 無言呪文: クィディッチの試合や、最終決戦でハリーをロープで縛り上げた際に、彼は杖を振るうことなく無言で呪文を行使しました。
• 欺瞞: 彼の最大の「技術」は、その臆病な振る舞いでホグワーツのほぼ全ての教員と生徒を一年間にわたって欺き続けた演技力でした。

• ターバン: 彼のトレードマークである紫色のターバン。表向きはルーマニアで出会った吸血鬼から身を守るためとされていましたが、実際には後頭部のヴォルデモート卿の顔を隠し、その囁き声を抑えるためのものでした。

• ヴォルデモート卿: クィレルはヴォルデモート卿の宿主であり、完全な支配下にあるしもべでした。ヴォルデモート卿は彼を便利な道具としか見なしておらず、弱く愚かな魔法使いだと侮蔑していました。
• セブルス・スネイプ: スネイプは学期当初からクィレルを疑っており、ジェームズ・ポッターへの恩義からハリー・ポッターを守るため、彼の行動を絶えず監視し、妨害していました。
• ハリー・ポッター: ヴォルデモート卿の命令により、クィレルはハリーを幾度となく殺害しようとしました。最終的に、ハリー自身が持つ古代の守りの魔法によって、クィレルは滅びることとなりました。
• アルバス・ダンブルドア: ホグワーツの校長としてクィレルを雇用しました。ダンブルドアはクィレルの動向を把握しており、彼をハリーと賢者の石を守るための計画の一部として利用していた節があります。

• Quirinus: ローマ神話における戦争の神「クィリヌス」に由来する可能性があります。この神はローマの建国者ロームルスと同一視されることもあり、一つの体に二つの側面（神と人間）を持つというクィレルの二重性を暗示しているのかもしれません。
• Quirrell: 英語の “quiver”（震える）や “squirrel”（リス）を連想させ、彼が演じていた臆病で神経質な性格を反映しています。

• 所属寮: J.K. ローリングは公式サイト Pottermore で、クィレルがホグワーツ在学中にレイブンクロー寮に所属していたことを明かしました。
• 映画での描写: 映画『ハリー・ポッターと賢者の石』では、クィレルは漏れ鍋で初めてハリーと会った際にはターバンを巻いていません。これは原作と異なる点です。また、彼の最期はハリーに触れられたことで石のように硬化し、崩れ去るという、より視覚的に劇的な演出に変更されています。
• ゲームでの設定: ビデオゲーム版では、クィレルは最終ボスとして登場し、原作よりも複雑な魔法戦闘を繰り広げます (ゲーム設定)。