トロール
概要
トロールは、魔法界に生息する巨大で非常に力が強いが、知能が著しく低いことで知られる魔法生物である。その暴力的な性質と予測不可能な行動から非常に危険な存在と見なされているが、単純な警備任務などに利用されることもある。物語においては、特に『ハリー・ポッターと賢者の石』でハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーの三人の絆を決定づけた存在として象徴的な役割を果たした。
身体的特徴と習性
トロールは一貫して醜悪で巨大な姿で描かれる。原作で遭遇したマウンテン・トロール (Mountain Troll) は以下のような特徴を持つ。
- 体格: 身長は約12フィート(約3.6メートル)に達する。
- 皮膚: 鈍い花崗岩のような灰色の皮膚を持つ。
- 体型: 大きな岩のような、ごつごつした体つきで、頭は小さくハゲている。脚は丸太のように太く短く、足は硬い角質に覆われた平らな形をしている。
- 臭い: 「古い靴下と、誰も掃除しない公衆便所を混ぜたような」と表現される強烈な悪臭を放つ。
- 武器: 巨大な木製のこん棒を携えていることが多く、それを振り回して周囲のものを破壊する。
- 習性: 極めて愚鈍であり、コミュニケーションはうなり声や身振りが主である。暴力的で、ほとんど理性的な行動は期待できない。
分類
ニュート・スキャマンダーの著書『幻の動物とその生息地』によると、トロールには主に三つの種類が存在する。
- マウンテン・トロール (Mountain Troll): 最も大きく、最もどう猛な種類。ハゲており、薄灰色の皮膚を持つ。『ハリー・ポッターと賢者の石』でクィリナス・クィレルがホグワーツ城内に侵入させたのはこの種類である。
- フォレスト・トロール (Forest Troll): 薄緑色の皮膚を持ち、緑色か茶色の毛がまばらに生えていることがある。
- リバー・トロール (River Troll): 紫がかった皮膚を持ち、短い角が生えていることがある。橋の下などに潜んでいるのが見られる。
知能と言語
トロールは魔法生物の中でも特に知能が低いことで知られ、「最も愚かな巨体よりもさらに愚か」と評される。彼らの言語は基本的にうなり声で構成されているが、『幻の動物とその生息地』によれば、一部の知的な個体は簡単な人間の単語をいくつか話すように教えることが可能だとされている。 この知能の低さゆえに、単純な魔法であっても効果的に作用することがある。ロン・ウィーズリーがウィンガーディアム・レビオーサの呪文でトロール自身のこん棒を浮かせ、その頭上に落として気絶させたのがその好例である。
物語における役割
- ハリー・ポッターと賢者の石: 1991年のハロウィーンに、クィレル教授がヴォルデモート卿の指示で、みぞの鏡から賢者の石を盗み出すための陽動としてマウンテン・トロールを城内に解き放った。このトロールは女子トイレでハーマイオニー・グレンジャーを襲うが、駆けつけたハリー・ポッターとロン・ウィーズリーによって倒される。この出来事をきっかけに、三人は固い友情で結ばれることとなった。
- ハリー・ポッターとアズカバンの囚人: シリウス・ブラックがグリフィンドール塔に侵入した後、アルバス・ダンブルドアは警備強化のため、数体のトロールを警備員として雇った。これは、彼らが命令を理解する能力は低いものの、単純な見張り役は務まることを示している。
魔法省による分類
魔法省の魔法生物規制管理部は、トロールを危険度分類で最高レベルの XXXXX(魔法使い殺しとして知られる/飼育・懐柔不可能)に指定している。(幻の動物とその生息地) しかし、前述の通り警備員として雇われる例もあるため、この分類は「完全に制御下に置くことや、ペットとして飼い慣らすことが不可能」という意味合いが強いと考えられる。
語源
「トロール (Troll)」という名称は、スカンジナビアの民間伝承に登場する同名の存在に由来する。神話におけるトロールは、しばしば山や洞窟に住む、醜く、鈍感で、人間に対して敵対的な超自然的存在として描かれており、J.K. ローリングの描くトロール像と多くの共通点を持っている。
舞台裏情報
- 映画版では、トロールは原作の記述に忠実なCGI(コンピュータグラフィックス)で描かれている。特に『賢者の石』における女子トイレでの戦闘シーンは、原作の恐怖とユーモアを巧みに映像化している。(映画設定)