ファビアン・プルウェットの懐中時計

この懐中時計は、ハリー・ポッターが17歳の誕生日にモリー・ウィーズリーから贈られたものである。金製だが、ケースには少々へこみがある。文字盤には通常の針の代わりに、小さな星々が周回しており、それによって時刻を示す。ハリーは、この時計が新品でないこと、そしてへこみがあることが、まるで歴史を持っているようで気に入っていた。

この時計の主な機能は、魔法的な方法で時刻を知らせることである。しかし、その真の価値は実用性よりも象徴的な意味合いにある。

  • 成人の証: 魔法使いの世界では、17歳(成人と見なされる年齢)の誕生日に腕時計や懐中時計を贈るのが伝統となっている。この時計は、ハリーが魔法社会の一員として正式に成人したことを示す象徴である。
  • 家族の絆: モリー・ウィーズリーが、実の息子であるロン・ウィーズリーに新品の時計を贈った一方で、亡き弟の大切な形見であるこの時計をハリーに譲ったことは、ハリーを本当の家族の一員として受け入れていることの深い愛情の表れである。

比較として、アルバス・ダンブルドアも非常にユニークな懐中時計を所有していた。その時計には12本の針があり、数字の代わりに惑星が描かれていた。これは、魔法使いの時計が単なる計時道具ではなく、所有者の個性や魔法を反映するものであることを示唆している。

この時計は元々、不死鳥の騎士団の最初のメンバーの一人であったファビアン・プルウェットのものであった。彼はモリー・ウィーズリーの弟である。 第一次魔法戦争の最中、ファビアンは兄弟のギデオン・プルウェットと共に、アントニン・ドロホフを含む5人の死喰い人に殺害された。彼は勇敢に戦った英雄として記憶されている。 彼の死後、この時計は姉のモリーが形見として保管していた。そして1997年7月31日、ハリー・ポッターの17歳の誕生日に、モリーからハリーへと贈られた。

ファビアンの懐中時計は、『ハリー・ポッターと死の秘宝』において、物語の序盤で重要な役割を果たす。

  • ハリーの成長と覚悟: この贈り物は、ハリーが子供時代を終え、ヴォルデモート卿との最終決戦に臨む大人としての責任を負うことを象徴している。
  • 過去との繋がり: 亡き騎士団員からの遺品を受け継ぐことで、ハリーは第一次魔法戦争で戦った人々の遺志を継ぎ、自らがその戦いを終わらせる使命を帯びていることを改めて認識させられる。
  • ダーズリー家との対比: ダーズリー家からの無神経な贈り物(ティッシュペーパー)とは対照的に、この時計はハリーが魔法界で得た家族からの愛と支援を明確に示している。

魔法使いの社会において、17歳の誕生日に時計を贈るという伝統は、マグル(非魔法族)の文化における成人祝いの慣習を反映している可能性がある。この伝統は、ウィーズリー家だけでなく、魔法界全体で一般的に行われていることが示唆されている。