ダーズリー家

ダーズリー家 (The Dursley family) は、ハリー・ポッターの唯一の存命の親戚であるマグルの一家です。一家はバーノン・ダーズリー、その妻ペチュニア・ダーズリー (旧姓エバンズ)、そして一人息子のダドリー・ダーズリーで構成されています。彼らはサリー州リトル・ウィンジングプリベット通り四番地に居住しています。 ダーズリー一家は、魔法やその他一切の「普通でない」事柄に対する深い嫌悪と恐怖を抱いており、完璧に正常であることを社会的な理想としています。この価値観のために、彼らは甥であるハリーを冷遇し、彼の魔法の能力を隠蔽しようとしました。物語を通して、彼らは魔法界とは対照的な、閉鎖的で偏見に満ちたマグル社会の象徴として描かれています。ハリーにとって、彼らの家は苦痛な幼少期の舞台であると同時に、母リリー・ポッターの血の護りによってヴォルデモート卿から身を守るための重要な避難所でもありました。

ダーズリー家の物語への関与は、1981年11月1日に、アルバス・ダンブルドアが赤ん坊のハリーを彼らの家の玄関先に置いたことから始まります。ハリーの両親がヴォルデモートに殺害された後、彼らはハリーの唯一の保護者となりました。彼らはハリーの出自を隠し、階段下の物置で育てるなど、息子ダドリーとは対照的に極めて劣悪な環境で彼を扱いました。 ハリーが11歳になる年、ホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証が届き始めると、彼らは魔法の存在をハリーから遠ざけようと必死に抵抗しました。最終的にルビウス・ハグリッドが介入し、ハリーは自身の運命を知ることになります。その後もハリーは毎年夏休みにダーズリー家に戻ることを義務付けられましたが、これはリリーの血縁者であるペチュニアの家にいる限り、母の犠牲による強力な護りの魔法が有効であり続けるためでした。 物語が進むにつれて、一家と魔法界との接触は増えていきます。ドビーの来訪、マージ叔母さんの膨張事件、ウィーズリー家による暖炉からの訪問など、彼らが最も恐れる「異常」な出来事が次々と起こりました。特に重要な転機は、ダドリーが吸魂鬼 (ディメンター) に襲われた事件です。この出来事はダドリーの性格に大きな変化をもたらし、ハリーに対する彼の見方を変えるきっかけとなりました。 第二次魔法戦争が激化すると、ダーズリー一家は不死鳥の騎士団の保護下に入り、プリベット通り四番地を永久に離れることになりました。別れの際、ダドリーは初めてハリーへの感謝の念を口にし、長年にわたる彼らの険悪な関係に和解の兆しが見えました。

ダーズリー一家は、物質主義的で、世間体を異常に気にする性格を共有しています。

  • 外見: バーノンは首がほとんどない恰幅のいい大男で、大きな口ひげを生やしています。ペチュニアは馬のように顔が長く、非常に痩せており、近所を詮索するために異常に長い首を持っています。ダドリーは幼少期から青年期にかけて極度に太っていましたが、後にボクシングを始めてからはたくましい体つきになりました。
  • 性格: 彼らは魔法的なもの全てを「まともじゃない」と見なし、徹底的に否定します。バーノンは怒りっぽく、自分の意に沿わないことがあるとすぐに激昂します。ペチュニアは姉リリーの魔法の才能に嫉妬しており、その感情がハリーへの冷たい態度の根源にあります。彼女はまた、極度の潔癖症でもあります。ダドリーは両親に甘やかされて育ったため、わがままでいじめっ子でしたが、吸魂鬼との遭遇後は精神的に成長を見せました。

ダーズリー家の住居であるプリベット通り四番地は、彼らの価値観を体現したような、完璧に手入れされた退屈な郊外の一軒家です。この家はハリーにとって監獄のような場所でしたが、同時に母の愛による古代の魔法が宿る唯一の安全地帯でもありました。ハリーが17歳になるか、彼がその場所を「家」と呼ばなくなるまで、この護りは有効でした。

  • ダーズリー (Dursley): J.K. ローリングの出身地に近い、イギリスのグロスタシャー州にある実在の町の名前です。作者は、この名前が持つ「鈍くて陰気な」響きを気に入って採用したと述べています (J.K. ローリングのインタビューより)。
  • ペチュニア (Petunia): 一般的な園芸植物であるペチュニアから取られています。これは、優雅なユリ (Lily) の花を名前の由来に持つ妹への対比と嫉妬を象徴していると考えられます。
  • バーノン (Vernon): 古典的なイギリスの男性名ですが、作者による特別な意図は明かされていません。
  • ダドリー (Dudley): 英語圏の名前で、「dud」(失敗作、役に立たないもの)という言葉を連想させることがあります。
  • J.K. ローリングはインタビューで、ダーズリー家がプリベット通りを去る際、ペチュニアがハリーに何かを言いかけた場面について語っています。彼女は単なる別れの挨拶だけでなく、幸運を祈る言葉や、長年否定し続けてきた魔法界に対する複雑な感情を伝えようとしていたと示唆しています (J.K. ローリングのインタビューより)。
  • 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』には、ペチュニアがハリーに対し、妹リリーを失った悲しみと嫉妬を語る未公開シーンが存在します (映画版)。
  • 物語完結後の作者の発言によれば、ダドリーは結婚して二人のマグルの子供をもうけ、ハリーとはクリスマスカードを交換する間柄になりました。時折、互いの家族を連れて会うこともあり、彼らの子供たちが静かに遊ぶ間、二人は気まずい沈黙の中で座っていたとされています (Pottermore)。