バーノン・ダーズリー

バーノン・ダーズリー (Vernon Dursley) は、ハリー・ポッターの叔父であり、妻はハリーの母リリー・ポッターの姉であるペチュニア・ダーズリーです。彼は魔法を一切持たないマグルであり、サリー州リトル・ウィンジングのプリベット通り4番地に住んでいます。物語において、彼は魔法や一切の「普通でない」事柄に対する極度の嫌悪と恐怖を抱く人物として描かれています。その性格から、幼いハリーを冷遇し、彼の魔法の力を抑圧しようとしました。彼は、ハリーが属する魔法界とは対極にある、平凡で閉鎖的なマグル社会を象徴する存在です。

バーノンはドリル製造会社であるグランニングズ社に勤務しており、そこでペチュニア・エバンズと出会いました。二人は完全に「普通」であるという価値観を共有し、すぐに意気投合しました。バーノンはジェームズ・ポッターリリー・ポッターとの初対面の場で、魔法使いであるジェームズを軽蔑し、非常に気まずい雰囲気となりました。彼はポッター夫妻の結婚式にも出席しませんでした。

1981年、ポッター夫妻がヴォルデモート卿に殺害された後、アルバス・ダンブルドアは赤ん坊のハリー・ポッターをダーズリー家の玄関先に置き去りにしました。バーノンとペチュニアは、魔法界への恐怖と、しぶしぶながらの義務感からハリーを引き取りました。しかし、彼らはハリーを家族の一員として扱うことはなく、息子であるダドリー・ダーズリーを溺愛する一方で、ハリーには階段下の物置を寝室として与え、無視と虐待を繰り返しました。バーノンは、ハリーの中に眠る魔法の力を「叩き出してやる」ことを目標としていました。

ハリーが11歳になると、ホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証が大量に届き始めました。バーノンはこれを阻止しようと、郵便受けを塞ぎ、最終的には家族を連れて海の上の小屋へ逃げ込みます。しかし、そこにルビウス・ハグリッドが現れ、ハリーの出自を明かしました。バーノンがアルバス・ダンブルドアを侮辱した結果、ハグリッドはダドリーに豚の尻尾を生やすという罰を与えました。

ハリーがホグワーツに入学して以降も、バーノンのハリーに対する態度は変わりませんでした。夏休みの間、彼はハリーの学用品をすべて取り上げ、寝室の窓に鉄格子を取り付けるなどして、魔法界との接触を断とうとしました。彼の姉であるマージョリー・ダーズリーがハリーを侮辱した際には、ハリーの怒りによって彼女が風船のように膨らむ事件も起きています。不死鳥の騎士団のメンバーがハリーを迎えに来た際も、彼は終始不信感と恐怖を露わにしていました。

1997年、ハリーを保護していた母親の血の護りが失効するため、ダーズリー一家は不死鳥の騎士団の護衛のもと、隠れ家へ避難することを余儀なくされました。バーノンは最後まで、これがハリーが家を乗っ取るための策略だと疑っていましたが、最終的にはしぶしぶ従いました。これが、原作における彼の最後の登場となります。

バーノンは「首がほとんどなく、大きな口ひげを生やした、恰幅のいい大男」と描写されています。怒ると顔が紫色に変わることが多く、その姿はセイウチに例えられています。

  • 正常性への執着: 彼の行動原理の根幹には、「普通」であることへの異常なまでの執着があります。彼は奇妙なこと、神秘的なこと、そして何よりも魔法を心から嫌悪しています。
  • 権威主義的: 家庭内では暴君として振る舞い、特にハリーに対しては怒鳴りつけ、罰を与えることで自分の意のままにコントロールしようとします。
  • 偏狭で物質主義: 彼は自分の理解できないものを全て拒絶し、社会的地位や所有物で他人を判断する傾向があります。彼のグランニングズ社での地位や自家用車は、彼の自尊心の源です。
  • 臆病: 尊大な態度とは裏腹に、魔法のような自分の支配が及ばない力に直面すると、極度に臆病になります。ハグリッドアーサー・ウィーズリーといった魔法使いの前では、彼は恐怖で萎縮してしまいます。

バーノン・ダーズリーは完全なマグルであり、一切の魔法能力を持ちません。彼の唯一の「技術」は、魔法の存在を断固として否定し、無視し、抑圧しようとする頑固さだけです。

  • 会社の車: 彼の社会的地位と「普通」の生活を象徴するものです。
  • ドリル: 彼が重役を務めるグランニングズ社の製品であり、彼の非魔法的で実利的な世界観を象徴しています。
  • ライフル銃: 海の上の小屋魔法から身を守ろうとした際に使用した武器。ハグリッドによって簡単にねじ曲げられ、マグルの武力の無力さを示しました。

「Vernon」はフランスの地名に由来する一般的な英語の男性名で、「ハンノキの木立」を意味します。この名前には特別な魔法的な意味はなく、彼の平凡なキャラクター性を強調しています。 「Dursley」は、作者J.K.ローリングが育った場所の近くにある、イングランドのグロスターシャーに実在する町の名前です。作者は、この名前が持つ「鈍くていかめしい」響きから採用したと語っています (Pottermore)。

  • J.K.ローリングは公式サイト「Pottermore」で、バーノンの魔法嫌いは、彼自身の偏見に加えて、妻ペチュニアが妹リリーの魔法の才能に抱いていた嫉妬心に影響された部分もあると明かしています。
  • 映画版では、俳優リチャード・グリフィスが演じました。彼の演技は、原作の持つ脅威的な側面と、コミカルな側面の両方を捉えています(映画版設定)。
  • 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』の未公開シーンには、ダーズリー家がプリベット通りを去る場面で、ダドリーがハリーと和解の握手をする様子が描かれています。このシーンでもバーノンはハリーに対して不信感を抱いたままです(映画版設定)。