マイキュー・グレゴロビッチ

マイキュー・グレゴロビッチは、ヨーロッパで最も著名な作り職人の一人であり、イギリスのギャリック・オリバンダーの競合相手として知られていた人物です。彼はかつて死の秘宝の一つであるエルダーの杖を所有していましたが、若き日のゲラート・グリンデルバルドによって杖を盗まれました。この出来事が、後に第二次魔法戦争の終盤においてヴォルデモート卿が彼を追跡し、殺害する直接的な原因となりました。

グレゴロビッチの詳しい前半生は不明ですが、彼は非常に優れた職人としてヨーロッパ大陸で名声を確立しました。彼の顧客には、ブルガリアの有名なクィディッチ選手であるビクトール・クラムも含まれていました。彼の作る杖はオリバンダーのものとはスタイルが異なり、クラムの杖は「普通よりやや太め」と評されています。 彼の人生における最大の転機は、何らかの経緯で伝説のエルダーの杖を手に入れたことです。彼はこの杖の力を解明し、その性質を複製しようと試みました。また、自身の商売を繁盛させるため、自分がエルダーの杖を所有しているという噂を意図的に広めました。しかし、この軽率な行動が若きゲラート・グリンデルバルドの注意を引くことになります。ある夜、グリンデルバルドはグレゴロビッチの工房に侵入し、彼を失神呪文で気絶させ、エルダーの杖を盗み出しました。 それから数十年後、ヴォルデモート卿は最強の杖を求めてエルダーの杖の行方を追い始めます。彼はまずオリバンダーを拷問し、グレゴロビッチが杖を所有していたという情報を得ました。1997年、ヴォルデモート卿はついにグレゴロビッチの許を突き止めます。開心術 (レジリメンシー)を使い、グレゴロビッチの記憶から杖が金髪の若者(グリンデルバルド)に盗まれたことを知ると、用済みとなった彼をアバダ・ケダブラの呪文で殺害しました。この一部始終は、ハリー・ポッターヴォルデモート卿との精神的な繋がりを通して目撃することとなりました。

グレゴロビッチは、ヴォルデモート卿の記憶を通して見たハリー・ポッターの視点から、白髪と白い髭を生やした老人として描かれています。彼は鷲鼻で、大きく潤んだ暗い色の目をしていました。 性格については、野心的でやや見栄を張る一面があったと考えられます。エルダーの杖の所有を吹聴してビジネスに利用しようとした行為は、彼の商人気質と同時に、その危険性に対する認識の甘さを示唆しています。ヴォルデモート卿に詰問された際には、命乞いをするなど、恐怖に満ちた姿を見せました。

グレゴロビッチの戦闘における魔法能力は不明ですが、杖作り職人としては最高峰の技術を持っていました。

  • 杖作り: 彼はヨーロッパでオリバンダーと並び称されるほどの腕を持つ職人でした。彼の杖は独自の哲学に基づいて作られており、例えばビクトール・クラムの杖は、ニワトコ材ドラゴンの心臓の琴線杖の芯に使い、長さは10と4分の1インチで、「がっしりとして曲がりにくい」ものでした。
  • エルダーの杖: グレゴロビッチは、この伝説的な杖を一時的に所有していましたが、前の所有者を打ち負かして手に入れたわけではないため、その真の主人ではありませんでした。彼の所有は、エルダーの杖の血塗られた歴史における重要な一幕となりました。

* Mykew (マイキュー): ロシア語の名前「ミハイル (Mikhail)」や東欧圏の名前のスラブ系表記である可能性があります。 * Gregorovitch (グレゴロビッチ): 「グレゴリーの息子」を意味する典型的なスラブ系の父称姓です。「グレゴリー」はギリシャ語の「Gregorios」に由来し、「用心深い」「見張っている」といった意味を持ちます。しかし、彼がエルダーの杖をあっさりと盗まれたことを考えると、この名前は皮肉な意味合いを帯びています。

  • 映画での描写: 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、クロアチア出身の俳優ラデ・シェルベッジア (Rade Šerbedžija) がグレゴロビッチを演じました。原作の描写に忠実に、ヴォルデモートに殺害される短い場面で登場します。