ウールの孤児院 (Wool's Orphanage)

• タイプ (Type): 孤児院、麻瓜の施設
• 地点 (Location): ロンドン、イギリス
• 所有者 / 居民 (Owner/Residents): ミセス・コール (管理人)、トム・マールヴォロ・リドル、エイミー・ベンソン、デニス・ビショップ
• 重要特徴 (Key Features): 四角い殺風景な建物、高い鉄柵、不愛想な雰囲気

ウールの孤児院は、ロンドンに位置する麻瓜の施設です。原作では、高い鉄柵に囲まれた、飾り気のない四角い建物として描写されており、全体的に陰鬱で色あせた印象を与えます。この孤児院は、魔法界から隔絶されたトム・マールヴォロ・リドル (のちのヴォルデモート卿) が幼少期を過ごした場所として、極めて重要な意味を持ちます。 孤児院の歴史は、トム・リドルの誕生と密接に結びついています。1926年の大晦日、衰弱しきった魔女のメローピー・ゴーントがこの孤児院にたどり着き、男の子を出産しました。彼女は息子にトム・マールヴォロ・リドルと名付けた後、まもなく死亡しました。こうして、トムはこの孤児院で、愛情のない環境の中、自身の出自を知らないまま育てられました。 管理人であるミセス・コールの記憶によれば、トムは赤ん坊の頃から奇妙な子供でした。滅多に泣かず、成長するにつれて他の子供たちをいじめ、周りでは不可解な出来事が頻繁に起こりました。彼は自身の持つ特殊な能力に早くから気づいており、それを他者を支配し、怖がらせるために利用していました。

ウールの孤児院は、ヴォルデモート卿の邪悪な人格が形成された原点として、物語において中心的な役割を果たします。この場所での孤独と疎外感が、彼の麻瓜に対する侮蔑と、自らの特異性への執着を育みました。 この孤児院が最も重要な舞台となるのは、ハリー・ポッターと謎のプリンス の中で、アルバス・ダンブルドアがペンシーブを通してハリー・ポッターに見せる記憶の場面です。1938年、ダンブルドアはトムをホグワーツ魔法魔術学校に招待するためにこの孤児院を訪れます。 この訪問を通じて、読者は若き日のトム・リドルの異常性を目の当たりにします。

• 魔法の萌芽と悪用: トムはダンブルドアに対し、自分が他人と違うこと、動物（特に蛇）と話せること (パーセルタング)、そして自分を不快にさせた者に苦痛を与える能力があることを認めます。彼はビリー・スタッブズのウサギを梁から吊るしたり、エイミー・ベンソンとデニス・ビショップを洞窟に連れて行き、彼らに精神的な傷を負わせたりしました。
• 収集癖の兆候: ダンブルドアはトムの部屋の洋服ダンスから、彼が他の孤児から盗んだ品々（ヨーヨー、銀の指ぬき、ハーモニカなど）を発見します。この「記念品」を収集する行為は、のちに彼が自らの魂を分割して重要な魔法の品々に隠す分霊箱 (ホークラックス) の創造へと繋がる、所有欲と支配欲の初期の表れでした。
• 麻瓜世界への嫌悪: 孤児院での生活は、トムに麻瓜の弱さと凡庸さを痛感させました。ホグワーツへの招待は、彼にとってこの忌まわしい場所と自身の麻瓜のルーツから逃れる唯一の道であり、彼の魔法至上主義の思想を決定づけるきっかけとなりました。

• トム・リドルの部屋: 家具がほとんどない質素な小部屋。鉄のベッドフレーム、硬い椅子、そして彼が盗んだ「記念品」を隠していた古い洋服ダンスがありました。ダンブルドアが彼と対峙した場所です。
• ミセス・コールのオフィス: 小さく整頓された部屋で、ミセス・コールがダンブルドアにトムの過去について語った場所です。彼女はここで密かにジンを飲んでいました。

• 映画版『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、ウールの孤児院は原作の描写よりもさらに大きく、威圧的なヴィクトリア朝様式のレンガ造りの建物として描かれています。この映像的表現は、多くのファンにとってこの場所の決定的なイメージとなりました。(映画設定)
• 映画版のトム・リドルの部屋には、のちに分霊箱の一つであるスリザリンのロケットを隠すことになる崖と洞窟の写真が飾られています。これは原作にはない脚色ですが、彼の暗い未来を暗示する伏線として機能しています。(映画設定)