フィルチの仕掛け花火
基本情報
- タイプ: 魔法のいたずら道具、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ製品
- 製造者: フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリー
記述と外観
「フィルチの仕掛け花火」とは、フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーが開発し、後にホグワーツ魔法魔術学校の管理人アーガス・フィルチによって没収された、強力な魔法の仕掛け花火一式を指す通称である。これらはフィルチのオフィスにある「没収品、超危険物」とラベルが貼られたファイリング・キャビネットに保管されていた。 この花火は、普通のマグルの花火とは比較にならないほど精巧で強力である。箱の中には様々な種類の花火が含まれており、作中では以下のようなものが描写されている。
- 巨大なロケット花火: 点火されると深紅のドラゴンや紫のコウモリの形になり、城の廊下を飛び回る。
- 花火の車輪 (Catherine wheels): 制御不能な勢いで回転しながら廊下を疾走する。
- 火花: 卑猥な言葉を空中に描き出す。
- 爆竹: 非常に大きな音を立てて爆発する。
これらは単なる視覚効果だけでなく、ある種の知性や目的を持って動くように魔法がかけられている。
魔法の特性と用途
この花火の最も顕著な魔法特性は、その持続性と除去困難性にある。
- 追跡能力: 一部の花火は特定の対象を執拗に追いかけるようにプログラムされている。物語の中では、ドローレス・アンブリッジがロケット花火に追い回される場面があった。
- 物理的妨害: 大量の煙と火花を発生させ、廊下の通行を著しく妨げる。また、爆竹は鎧兜を爆破するほどの威力を持つ。
主な用途は、壮大ないたずら、混乱の創出、そして権威への反抗の示威行動である。
歴史
この花火は、ウィーズリー兄弟がホグワーツ魔法魔術学校在学中に開発したもので、将来開店するいたずら専門店ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの試作品であった。しかし、完成した花火は校内で使用する前にアーガス・フィルチに没収されてしまう。 1996年、ドローレス・アンブリッジがホグワーツ高等尋問官、さらには校長に就任し、圧政的な規則で学校を支配した。これに反発したフレッドとジョージは、ホグワーツを中退することを決意。その際、自分たちの発明品であるこの花火をフィルチのオフィスから呼び寄せ呪文 (来い) で取り戻した。 兄弟は、箒に乗って玄関ホールから飛び立つ直前にこの花火を一斉に点火し、城中に解き放った。この出来事はアンブリッジの権威を大きく失墜させ、生徒たちの反抗精神を鼓舞する伝説的な事件となった。
物語における役割
「フィルチの仕掛け花火」は、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』において、アンブリッジの圧政に対する反逆の象徴として極めて重要な役割を果たした。 ウィーズリー兄弟が引き起こしたこの壮大な混乱は、生徒たちに勇気を与え、学校全体にいたずらや反抗行為を蔓延させるきっかけとなった。教師たちも、アンブリッジへの反感から花火の除去に非協力的であった。フリットウィック先生などは、見事な魔法がかけられているとして、一つの花火をわざと残して「呪文の研究」をしていたほどである。 この事件は、フレッドとジョージのホグワーツにおける伝説を不動のものとし、彼らの才能が単なる悪ふざけではなく、人々を勇気づける力を持つことを証明した。
幕後情報
- この花火の正式な製品名は「ウィーズリーの暴れバンバン花火 (Weasleys' Wildfire Whiz-bangs)」である。作中でフィルチから取り戻された箱は「基本点火セット (Basic Blaze-box)」と記されていた。「フィルチの仕掛け花火」という名称は、フィルチが一時的に所有していたことに由来する通称である。
- 映画版『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』では、このシーンがより視覚的に派手に演出されている。特に、巨大な火のドラゴンが「W」の字を描きながらアンブリッジを追い回す場面は、原作の精神を捉えた象徴的な描写となっている。(映画版)