イラクサは、魔法界とマグル界の両方に広く自生するありふれた植物です。その最も顕著な特徴は、葉と茎の表面を覆う無数の細かい刺毛で、これに触れると皮膚に焼けるような痛みを引き起こします。このため、生のイラクサを扱う際にはドラゴンの皮の手袋のような防護具の着用が推奨されます。 魔法薬学においては、主に乾燥させたものが多くの基本的な魔法薬の材料として広く利用されます。その薬効成分から、特に初歩的な治療薬の調合には欠かせない存在です。
イラクサは、特に治療や浄化に関連する特性を持つとされ、様々な用途で利用されます。
イラクサは、『ハリー・ポッターと賢者の石』で初めて具体的に言及されます。セブルス・スネイプ教授が担当する最初の魔法薬学の授業で、ハリー・ポッターたちが腫れ薬を調合する際にその名が登場しました。この場面は、ハリーに対するスネイプの厳しい態度を読者に印象付けると共に、魔法薬学という科目の精密さと難しさを初めて示す重要なシーンです。 また、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では、ミセス・ノリスが石にされた際にアルバス・ダンブルドアが狼狽するミネルバ・マクゴナガルにイラクサ酒を勧めて落ち着かせようとします。さらに『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、分霊箱を探しに出かけて衰弱したダンブルドアに対し、スネイプが治療の一環としてこれを差し出すなど、物語の重要な場面で小道具として効果的に使用されています。
イラクサ(Nettle)は現実世界でも古くから薬草として知られており、利尿作用や浄血作用があるとされ、ハーブティーやスープ、民間療法に広く用いられてきました。J.K. ローリングがイラクサを基本的な治療薬の材料として設定したのは、こうした現実世界の薬草学や民間伝承におけるイラクサの役割に基づいていると考えられます。