ウィゼンガモットは、イギリス魔法界における最高司法機関であり、議会としての機能も兼ね備えた古代からの組織です。その歴史は魔法省が設立されるよりも古く、魔法社会の秩序を維持する上で中心的な役割を担ってきました。 構成員は、ウィゼンガモット議員 と呼ばれ、通常は約50名で構成されます。議員は、胸の左側に銀糸で「W」の文字が刺繍された、梅色のローブを着用することが義務付けられています。 この組織は、法律を制定し、魔法界の最も重大な犯罪を裁く権限を持っています。その審理は、魔法省の地下にある法廷で行われ、特に第十法廷はハリー・ポッターの懲戒尋問や、第一次魔法戦争後の死喰い人の裁判で使用されたことで知られています。 歴史を通じて、ウィゼンガモットは時代の政治情勢を色濃く反映してきました。アルバス・ダンブルドアが首席魔法使いを務めていた長期間は公正な判断が下されていましたが、ヴォルデモート卿の復活後は魔法省の腐敗と共にその権威が悪用され、第二次魔法戦争中には死喰い人の支配下で、無実のマグル生まれを弾圧するための道具と化しました。
: アルバス・ダンブルドアのペンシーブの中で、ウィゼンガモットが死喰い人たちを裁く様子が描かれています。イゴール・カルカロフが他の死喰い人の名を密告して刑を免れた裁判や、ベラトリックス・レストレンジ、ロドルファス・レストレンジ、ラバスタン・レストレンジ、そしてバーティ・クラウチ・ジュニアがフランクとアリス・ロングボトム夫妻への拷問の罪でアズカバンへの終身刑を宣告された裁判がこれにあたります。
: 第5巻『不死鳥の騎士団』において、ハリー・ポッターは未成年者の前で吸魂鬼に対して守護霊の呪文を使用した罪で、ウィゼンガモット全法廷による正式な尋問を受けました。これは、通常の手続きを逸脱したコーネリウス・ファッジによる政治的な弾圧であり、ダンブルドアがハリーの弁護人として介入し、最終的にハリーはすべての嫌疑で無罪となりました。この尋問には、公正な態度を示したアメリア・ボーンズや、偏見に満ちたドローレス・アンブリッジも同席していました。
: ヴォルデモートが魔法省を掌握すると、ウィゼンガモットは完全に死喰い人の支配下に置かれました。ドローレス・アンブリッジが主導するマグル生まれ登録委員会は、事実上ウィゼンガモットの機能を利用した偽りの裁判であり、多くのマグル生まれの魔女や魔法使いから不当に杖を奪い、アズカバンへ送致しました。
「ウィゼンガモット (Wizengamot)」という名前は、「Wizard (魔法使い)」と、アングロサクソン時代のイングランドに実在した王の諮問評議会「Witenagemot (賢人会議)」を組み合わせたかばん語です。歴史的な「賢人会議」が国の賢者たちによって構成されていたように、魔法界の「ウィゼンガモット」も、経験豊富で影響力のある魔女や魔法使いたちによって構成される機関であることを示唆しています。