マグル生まれ

マグル生まれ (Muggle-born) とは、両親が二人とも非魔法族、すなわちマグルである魔法族の個人を指す言葉である。彼らは純血や半純血の魔法使いや魔女と全く同等の魔法能力を持って生まれてくる。 この現象は、魔法の能力が優性遺伝子によって受け継がれるため発生すると説明されている。マグル生まれの家系を遡ると、過去にスクイブの祖先が存在し、その潜性遺伝子であった魔法の力が数世代を経て再び現れた結果であるとされる (Pottermore)。 物語における最も著名なマグル生まれのキャラクターには、ハーマイオニー・グレンジャーやハリー・ポッターの母であるリリー・ポッター (旧姓エバンズ) がいる。

魔法界の法律上、マグル生まれは他の魔法族と完全に平等の権利を持つとされている。しかし、特に古い純血の家系からは深刻な偏見に晒されることが多く、侮蔑的な差別用語である「穢れた血」という言葉で呼ばれることもあった。 この偏見は、ヴォルデモート卿が権力を握った時代に制度的な迫害へと発展した。

• 第一次魔法戦争: ヴォルデモート卿と彼の追随者である死喰い人は、マグル生まれを魔法界から排除すべき対象とみなし、多くのマグル生まれが殺害された。
• 第二次魔法戦争: ヴォルデモート卿の支配下に入った魔法省は、マグル生まれ登録委員会を設立した。この委員会は、マグル生まれが「他の魔法使いから魔法を盗んだ」という虚偽の罪状で彼らを召喚し、尋問の末にアズカバンへ投獄した。この時期、多くのマグル生まれが身を隠すか、国外へ逃亡することを余儀なくされた。

物語全体を通じて、マグル生まれに対する差別とその克服は、重要なテーマの一つとなっている。

マグル生まれであることは魔法能力の優劣に全く関係なく、歴史上多くの強力で優れた魔法使いや魔女を輩出している。

• ハーマイオニー・グレンジャー: 「同学年で最も優秀な魔女」と評され、高度な呪文の知識と論理的思考力でハリー・ポッターとロン・ウィーズリーを幾度となく助けた。第二次魔法戦争におけるヴォルデモート卿の打倒に不可欠な存在であった。
• リリー・ポッター: ホラス・スラグホーンのお気に入り生徒であり、極めて才能のある魔女だった。息子のハリーを守るために自らの命を犠牲にした際、ヴォルデモート卿の死の呪いさえも打ち破る、非常に強力な古代の愛の護りを創り出した。
• テッド・トンクス: ニンファドーラ・トンクスの父であり、第二次魔法戦争中は不死鳥の騎士団の協力者であった。マグル生まれ登録委員会から逃亡中に捕らえられ、殺害された。
• コリン・クリービー と デニス・クリービー: ハリーに憧れていたグリフィンドール生の兄弟。コリンはホグワーツの戦いで、年齢が若いために避難を命じられたにもかかわらず城に残り、戦死した。
• ジャスティン・フィンチ＝フレッチリー: ハッフルパフの生徒で、ダンブルドア軍団の一員。

マグル生まれの存在は、魔法族の血統の純粋性を至上とする「純血主義」の思想と真っ向から対立する。

• ホグワーツ魔法魔術学校の創設者の一人であるサラザール・スリザリンは、マグル生まれの生徒を城から追放すべきだと主張し、他の創設者と対立した末に学校を去った。彼は秘密裏に秘密の部屋を建設し、マグル生まれを襲撃するためのバジリスクを仕掛けた。
• 死喰い人のイデオロギーの根幹は純血主義であり、彼らはマグル生まれを魔法界から一掃し、純血の魔法使いが支配する世界を築こうと企てた。

• マグル生まれ (Muggle-born): 文字通り「マグルから生まれた者」を意味する、中立的で事実に基づいた表現である。
• 穢れた血 (Mudblood): マグル生まれに対する最も侮蔑的な差別用語。「泥の血」を意味し、マグル生まれの血が不純で汚れているという純血主義者の思想を反映している。この言葉を使用することは、魔法社会において極めて攻撃的な行為と見なされる。

• J.K. ローリングは、魔法界におけるマグル生まれへの偏見が、現実世界における人種差別やその他の形態の偏狭さ（bigotry）の寓話であることを繰り返し述べている (作者インタビュー)。
• マグル生まれの存在は、魔法の能力を引き起こす遺伝子が、時に潜性遺伝子として何世代にもわたって受け継がれ、ある代で再び発現するという科学的な概念に基づいていると説明されている (Pottermore)。