プロングズ (Prongs) は、ジェームズ・ポッターがホグワーツ在学中に得たニックネームです。この名前は、彼が変身するアニマガスの姿である雄鹿 (stag) の枝角 (prongs) に由来します。プロングズは、親友であるリーマス・ルーピン、シリウス・ブラック、ピーター・ペティグリューと共に結成した「忍びの地図の作成者」(The Marauders) の一員としての彼のアイデンティティを象徴しています。また、この雄鹿という姿は、後に息子であるハリー・ポッターの守護霊の呪文の形として現れ、父子の強い絆とジェームズの死してなお続く息子への守護を象徴する、物語の重要なシンボルとなりました。
プロングズという人格は、ジェームズ・ポッターのホグワーツ時代に形成されました。
親友のリーマス・ルーピンが人狼であることを知ったジェームズは、シリウス・ブラック (パッドフット) とピーター・ペティグリュー (ワームテール) と共に、ルーピンが満月の夜に変身した際に彼を支え、孤独を和らげるために、非合法で極めて困難なアニマガスの術を習得することを決意しました。5年生になる頃には、三人は完全なアニマガスとなり、動物の姿で人狼と化したルーピンと共にホグワーツの敷地を駆け回りました。ジェームズの変身した姿が雄鹿であったことから、彼は「プロングズ」というニックネームで呼ばれるようになりました。
プロングズは他の3人と共に、ホグワーツ城の全ての秘密の通路と人々の動きをリアルタイムで記した魔法の地図、「忍びの地図」を作成しました。地図には、作成者としてムーニー、ワームテール、パッドフット、そしてプロングズの名が誇らしげに記されています。
プロングズとしてのジェームズの姿は、大きくて堂々とした雄鹿です。その立派な枝角は、人狼と化したルーピンを抑えつけ、危害が及ばないようにするために非常に役立ちました。この姿は、森の王とも称される雄鹿のイメージ通り、力強さと気高さを兼ね備えています。
雄鹿という動物は、リーダーシップ、誇り、そして守護の象徴とされています。これはジェームズ・ポッターの性格と深く一致しています。彼は生まれながらのリーダーであり、自信に満ち溢れ(時には傲慢と見なされることもありました)、友人や愛する家族を守るためにはいかなる危険も厭わない、強い忠誠心と保護欲を持っていました。最終的に、彼は妻のリリー・ポッターと息子のハリーをヴォルデモート卿から守るためにその命を捧げました。
15歳という若さで、魔法省に未登録のままアニマガスの術を完全に習得した事実は、ジェームズが非常に優れた才能を持つ魔法使いであったことを示しています。これは、彼の魔法に対する深い理解と、友人を助けるための強い意志の表れです。
ジェームズ自身の守護霊が雄鹿であったことは、ほぼ確実視されています。アニマガスの変身形態とその者の守護霊の形態が一致することは非常に一般的です。この魔法的な繋がりは、息子のハリー・ポッターに引き継がれました。ハリーが初めて強力な守護霊を呼び出した際、彼はそれを父親の霊、あるいは父親自身が呼び出した守護霊だと信じ込みましたが、後にそれが自分自身の力で呼び出した、父親と同じ雄鹿の守護霊であったことに気づきます。これは、ハリーが父親から受け継いだ強さと愛を自覚する、重要な成長の瞬間でした。
プロングズは、ムーニー (リーマス・ルーピン)、パッドフット (シリウス・ブラック)、ワームテール (ピーター・ペティグリュー) と固い友情で結ばれていました。特にシリウスとは兄弟のような親友であり、プロングズ(雄鹿)とパッドフット(犬)はしばしば行動を共にしました。
プロングズとしてのジェームズと息子ハリーの関係は、雄鹿の守護霊によって象徴的に描かれます。この守護霊は、ハリーが最も絶望的な状況で吸魂鬼 (ディメンター) に立ち向かう際の力の源となり、物理的に側にいない父親が常に彼を見守っていることの証となりました。
スネイプの憂いの篩 (ペンシーブ) に残された記憶の中で、ジェームズがプロングズとしてスネイプをからかう姿が描かれていますが、同時にシリウスの悪戯によって人狼と化したルーピンに襲われそうになったスネイプを、命懸けで救ったのもジェームズであったことが示唆されています。
「プロングズ」(Prongs) は、雄鹿の枝分かれした角の先端部分を意味する英単語「prong」の複数形です。これはジェームズのアニマガスの姿を直接的かつ的確に表現した、非常に分かりやすいニックネームです。