ボガートは、見る者が最も恐れているものの姿に瞬時に変化する、特殊なまね妖怪です。その性質上、ボガートが本来どのような姿をしているのかは誰にも知られていません。人がいない状態のボガートは、単なる不定形のかたまりであると推測されています。 ボガートは暗く、閉ざされた空間を好み、屋内の様々な場所に潜んでいます。例えば、衣装戸棚の中、ベッドの下、古い振り子時計の中、あるいは机の引き出しの中などです。これらは厳密には生物ではなく「非存在 (Non-Being)」に分類され、人間が抱く恐怖心を糧として生きる存在です。 複数の人間が同時にボガートと対峙した場合、ボガートは誰の恐怖を優先して姿を変えるべきか混乱し、複数の恐怖が混じった奇妙な姿になることがあります。この性質は、ボガートを無力化する上で有効に働きます。
ボガートは物語の中で、登場人物たちの内面的な恐怖を具体的に描き出す重要な役割を担っています。
ボガートに対する最も効果的な防御策は、リディクラス (滑稽になれ) の呪文です。この呪文を成功させるには、術者はボガートが変身した恐怖の対象を、何か滑稽で面白い姿に変えることを心の中で強く想像する必要があります。 ボガートを打ち負かす最大の武器は「笑い」です。恐怖を笑いものにすることで、ボガートは力を失い、混乱して撃退されます。一人で対峙するよりも、仲間と一緒にいる方が対処しやすいとされています。
「ボガート (Boggart)」という名前は、イギリスの民間伝承に登場する、家に憑りついたり、沼地や野原に出没したりするいたずら好き、あるいは邪悪な妖精やゴブリンの一種に由来します。伝承上のボガートは多様な性質を持ちますが、人々に厄介ごとや恐怖をもたらす存在として共通しています。