プライオア・インカンターテム

  • 呪文名称 (Incantation): 現象名であり、特定の詠唱呪文ではない。
  • 発音 (Pronunciation): プライオア・インカンターテム (/praɪˌɔːr ɪŋkænˈtɑːtəm/)
  • 手勢 (Wand Movement): なし
  • 光芒颜色 (Light Color): 金色
  • 呪文効果 (Effect): 同じ魔法生物から杖芯を提供された二本の「兄弟杖」が互いに強制的に戦わされた際に発生する、極めて稀な魔法現象。一方の杖がもう一方の杖に、過去に使用した呪文を逆順で「吐き出させる」。特に死の呪いのような強力な魔法の場合、殺害された犠牲者の「残響」や「影」が、まるでゴーストのように現れる。
  • 呪文分類 (Type): 魔法現象

この現象が物語で最も顕著に現れたのは、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のクライマックスにおける、ハリー・ポッターヴォルデモート卿の決闘である。 リトル・ハングルトンの墓場で、復活したヴォルデモート卿ハリー・ポッターに決闘を挑んだ。ハリーが武装解除呪文 (エクスペリアームス) を、ヴォルデモートが死の呪い (アバダ・ケダブラ) を同時に放った際、二人の杖から放たれた呪文の光線が空中で連結した。これは、ハリーの杖(ヒイラギ不死鳥の羽根)とヴォルデモートの杖(イチイ不死鳥の羽根)が、アルバス・ダンブルドアの不死鳥フォークスから提供された羽根を芯に持つ兄弟杖であったために引き起こされた。 二本の杖は金色の光の糸で結ばれ、その糸の上を光の玉が移動し始めた。ハリーの意志の力がヴォルデモートを上回り、光の玉をヴォルデモートの杖の方へ押し返した。その結果、ヴォルデモートの杖は最近使用した魔法の「残響」を逆順で吐き出し始めた。出現した残響は以下の通りである。

これらの残響はヴォルデモート卿の注意を一時的に引きつけ、ハリーがポートキーを使って墓場から脱出するための貴重な時間を稼いだ。後にダンブルドアは、この現象が「プライオア・インカンターテム」と呼ばれるものであるとハリーに説明した。

  • 学習: この現象は意図的に学習したり、引き起こしたりすることはできない。これは杖の特性と特定の状況下で自然に発生するものである。
  • 反制: 決闘中、どちらか一方が杖の連結を切断すれば現象は終了する。ハリーとヴォルデモートの決闘では、両者とも相手に屈することを良しとしなかったため、連結が維持された。

「Priori Incantatem」はラテン語に由来する。

  • Prior: 「前の」「以前の」を意味する。
  • Incantatem: 「呪文を唱えること」を意味する動詞 “incantare” の対格形。

全体として、「前の呪文」と直訳でき、杖が直前に使用した呪文を逆向きに再生するという効果を的確に表している。

  • プライオア・インカンタートとの混同: 「プライオア・インカンターテム」は兄弟杖の間で起こる現象そのものを指すのに対し、「プライオア・インカンタート」(呪文よ、現れよ)は、ある杖が最後におこなった呪文を調査するために使われる特定の呪文である。作中では、エイモス・ディゴリー闇の印 (モースモードル) を出現させた杖を特定するため、ハリーの杖に対してこの呪文を使用した。
  • 映画での描写: 映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』では、この現象は二つの光線が激しくせめぎ合う「ビームの綱引き」として視覚的に描かれ、最終的に杖の周りを金色の光のドームが包み込む演出がなされた。この劇的な描写は、後の作品におけるハリーとヴォルデモートの対決シーンの視覚的特徴となった。(映画設定)