黒い羽ペン

• タイプ (Type): 魔法道具、闇の魔術の道具、拷問具
• 所有者 (Owners): ドローレス・アンブリッジ
• 製造者 (Maker): 不明

黒い羽ペンは、ひときわ長く、細い黒色の羽ペンで、そのペン先は異常なほど鋭く尖っています。外見上は普通の羽ペンと似ていますが、使用する際にインクを必要としないという大きな特徴があります。

この羽ペンの最も恐ろしい魔法特性は、その筆記の仕組みにあります。使用者が羊皮紙に文字を書くと、ペンはインクの代わりに使用者の血液を吸い上げて文字を綴ります。 同時に、羊皮紙に書かれた言葉が、そのまま使用者の手の甲に、まるでナイフで切りつけられたかのように痛みを伴いながら刻み込まれます。この傷から流れ出た血が、ペン先のインクとして機能します。刻まれた傷は魔法によってすぐに治癒しますが、皮膚には銀色のかすかな傷跡として残ります。この罰を繰り返し受けると、傷跡は永久に消えることのないものとなります。 この羽ペンは、ドローレス・アンブリッジが自身の権威に逆らう者、特に生徒に対して罰を与えるために用いた、極めて残忍な拷問道具です。

この羽ペンの起源や製造者については、原作では言及されていません。物語の中で確認できる唯一の所有者はドローレス・アンブリッジです。 彼女は、魔法省から派遣されホグワーツ魔法魔術学校の「闇の魔術に対する防衛術」教授および「上級尋問官」として着任した1995年から1996年の学年度に、この羽ペンを罰則として導入しました。 その後、ヴォルデモート卿が魔法省を掌握した1997年から1998年にかけて、アンブリッジは「マグル生まれ登録委員会」の長として、マグル生まれの魔女や魔法使いを尋問する際にもこの道具を再び使用しました。

• 《ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団》: この羽ペンが初めて登場し、物語において重要な役割を果たします。ハリー・ポッターは、アンブリッジの授業に異議を唱えた罰として、放課後に「嘘を言ってはいけない」という一文を繰り返し書かされました。これにより、彼の右手の甲には永久的な傷跡が残りました。この出来事は、ハリーの中にアンブリッジと腐敗した魔法省に対する強い反感を植え付けました。リー・ジョーダンも同様の罰を受けています。
• 《ハリー・ポッターと死の秘宝》: ハリー・ポッターの右手の甲に残った傷跡は、彼の額の傷跡と同様に、特定の状況下でうずくことがありました。特にヴォルデモート卿が強い怒りを感じた時や、アンブリッジ本人を直接目撃した際に痛みを発しました。また、三人が魔法省に潜入した際、アンブリッジがマグル生まれの被疑者たちに、この黒い羽ペンを使って書類に署名させている様子が描かれ、彼女の残虐性が全く変わっていないことが示されました。

• この羽ペンは、ヴォルデモート卿が代表する壮大で神話的な悪とは対照的に、規則や官僚主義の名の下に行われる、より現実的で陰湿な悪を象徴しています。それは権威を笠に着た人物による、個人的でサディスティックな嗜好に基づくいじめや虐待のメタファーです。
• 映画版『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』では、ハリーの手の甲に文字が痛々しく刻まれていく過程が視覚的に強調され、この道具の残忍さがより生々しく表現されています。（映画設定）