吸魂鬼 (ディメンター)

吸魂鬼 (ディメンター) は、魔法界で最も忌み嫌われる闇の生物の一つである。彼らは人間の幸福感を吸い尽くし、絶望と恐怖を植え付ける能力を持つ。長年にわたり、魔法使いの刑務所であるアズカバンの看守として魔法省に利用されていたが、本質的には善悪の概念を持たず、最も多くの魂を供給できる者に従う。彼らの最も恐ろしい攻撃は「吸魂のキス」として知られ、被害者の魂を永久に吸い取ってしまう。

吸魂鬼は人型の姿をしているが、その身長は非常に高く、常にぼろぼろの黒いローブを身にまとっている。ローブの下の姿は、腐敗してぬめりのある灰色がかった皮膚をしており、目はない。彼らは歩くのではなく、地面すれすれを滑るように移動する。彼らの存在は周囲の空気を凍てつかせ、周囲の光を弱める。

  • 冷気: 吸魂鬼が近づくと、突き刺すような冷気が発生し、周囲の環境(窓ガラスの霜など)にも影響を与える。
  • マグルへの不可視性: マグルは吸魂鬼を直接見ることはできないが、その存在によって引き起こされる絶望感や寒気は感じ取ることができる。
  • 繁殖: 吸魂鬼は繁殖せず、霧や腐敗のように、絶望と堕落が蔓延する場所で自然に発生するとされる。

吸魂鬼の能力は、精神的なものに直接作用する。

  • 幸福の吸引: 彼らの主な糧は人間のポジティブな感情、特に幸福感である。吸魂鬼は周囲の人々から幸福な記憶を吸い取り、代わりに最も暗く、最も辛い記憶を追体験させる。
  • 吸魂のキス: 吸魂鬼が行う最も恐ろしい行為。フードの下にある口で被害者の魂を吸い出す。魂を失った人間は、心のない抜け殻となり、生きながら死んでいる状態に陥る。これは死よりも酷い運命だと考えられている。
  • 飛行能力: 彼らは空中を自由に滑空することができる。

吸魂鬼に対する唯一の効果的な防御魔法は、高度な呪文である守護霊の呪文である。

  • 守護霊の呪文 (エクスペクト・パトローナム): この呪文は、術者の最も幸福な記憶をエネルギー源として、銀白色の守護霊を創り出す。守護霊は純粋な幸福感の塊であり、吸魂鬼が糧とすることができないため、彼らを追い払うことができる。
  • チョコレート: 吸魂鬼に遭遇した後の回復には、チョコレートが有効な応急処置となる。これは魔法的な治療法ではないが、気分を和らげ、体力を回復させるのに役立つ。

“Dementor” という名前は、英語で「正気を失わせる」「狂わせる」を意味する “dement” に由来する。これは、彼らが人々の心から幸福を奪い、絶望の淵に突き落とす効果を的確に表している。

  • 原作者のJ.K.ローリングは、自身が若年期に経験したうつ病との闘いが、吸魂鬼という存在を創造する上でのインスピレーションになったと語っている。(作者インタビュー)
  • 映画版では、吸魂鬼はより骸骨に近く、空中を舞う腐った布のような姿で描かれており、その不気味なイメージが視覚的に強調されている。(映画設定)