ニレ (Elm)

ニレは、優雅な呪文や魔法を生み出すことで知られる、非常に洗練された用の木材です。杖職人のギャリック・オリバンダーによれば、ニレの杖は最も事故や愚かな間違いが少なく、所有者が適切であれば、極めて高度な魔法を操ることが可能です。 この木材は、使い手として存在感、魔法における器用さ、そして天性の気品を兼ね備えた魔女や魔法使いを好むとされています。この特性から、一部の魔法使いの間では、ニレの杖を使いこなせるのは純血の者だけだという誤った俗信が生まれました。しかし、オリバンダー自身が多くのマグル生まれの魔法使いにニレの杖を選定した実績があり、この俗信を明確に否定しています。(Pottermore) また、ニレの杖は一度忠誠を誓った所有者以外の手に渡ると、その能力を完全に発揮しなくなることがあると言われています。

作中で最も有名なニレの杖は、ルシウス・マルフォイが所有していたものです。この杖は芯材にドラゴンの心臓の琴線を使用しており、彼の社会的地位を象徴する蛇の頭をかたどった銀製の杖ホルダーに仕込まれていました。 『ハリー・ポッターと死の秘宝』において、ヴォルデモート卿は自身の杖とハリー・ポッターの杖が「双子の芯」を持つために戦えない問題を回避するため、ルシウスからこの杖を強制的に取り上げます。「7人のポッターの戦い」の際、ヴォルデモートはこの杖でハリーを攻撃しますが、ハリーの杖が自己防衛的に放った金の炎によって、ニレの杖は破壊されてしまいました。これは、所有者であるルシウスの意志に反して使用されたこと、そしてハリーの杖が持つ特異な力が原因でした。

  • 俗信について: ニレの杖は純血の魔法使いにしか仕えないという考えは、ニレの杖の所有者たちが自らの血統の優位性を証明するために広めたものである可能性が高いです。ルシウス・マルフォイのような人物がこの木材を好んだのは、こうした背景があったからだと考えられます。(Pottermore)
  • 忠誠心: 所有者が死ぬと、杖も共に「死ぬ」——つまり、すべての魔力を失う——という言い伝えがありますが、オリバンダーによれば、これは特定の強い絆で結ばれた場合にのみ起こる現象のようです。(Pottermore)