ベゾアール石
基本情報
- 製造者: 天然物(ヤギの胃から採取)
記述と外観
ベゾアール石は、ヤギの胃の中から取り出される石であり、魔法薬の材料として、またそれ自体が強力な解毒剤として機能する貴重なものである。 その外観について、作中では『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でハリー・ポッターがロン・ウィーズリーを救うために使用したものが、「黒く縮んだ腎臓豆のよう」だと描写されている。
魔法特性と用途
ベゾアール石の最も重要な魔法特性は、ほとんどの種類の毒に対する即効性の高い解毒作用である。毒を盛られた者の喉に直接押し込むことで、迅速に効果を発揮する。その手軽さと有効性から、緊急時には非常に重宝される。 また、より複雑な解毒剤を調合する際の材料としても使用される。セブルス・スネイプが1年生の魔法薬学の授業で最初にハリーに問いかけたように、これは魔法使いにとって基本的かつ重要な知識である。 ただし、その効果は万能ではなく、バジリスクの毒のような極めて強力な闇の魔術によって生み出された毒物には効果がない。あくまで一般的な毒に対する「万能薬」的な位置づけである。
物語における役割
ベゾアール石は物語の中で、特に重要な場面で二度登場する。
- ハリー・ポッターと賢者の石: 物語で初めてその名が登場する。セブルス・スネイプが最初の魔法薬学の授業で、ハリーの知識を試すためにベゾアール石の入手先を質問した。ハリーが答えられなかったことは、スネイプが彼に抱く偏見を強める一因となった。この出来事は、魔法薬学の奥深さと、ハリーの魔法界での学びの始まりを象徴している。
- ハリー・ポッターと謎のプリンス: 物語の中で最も決定的な役割を果たす。ロン・ウィーズリーが、アルバス・ダンブルドアを狙って毒が盛られたオーク樽熟成蜂蜜酒を誤って飲んでしまった際、ハリーはかつて半純血のプリンスの教科書で読んだメモと、1年生の時のスネイプの授業を思い出した。彼は即座にホラス・スラグホーンの薬品棚からベゾアール石を取り出し、ロンの喉に押し込んで彼の命を救った。この功績により、ハリーはスラグホーンから絶大な信頼を得ることになり、後にトム・リドルに関する決定的に重要な記憶を入手するきっかけとなった。
幕後情報
ベゾアール石は、現実世界の歴史や伝承に由来するものである。実際に動物(特にヤギなどの反芻動物)の消化器系に見られる結石であり、中世ヨーロッパやアラビアの医学において、あらゆる毒に対する万能の解毒剤として非常に高価で取引されていた。J.K.ローリングは、この現実の伝承を魔法界のリアルな設定として巧みに取り入れている。