ペベレル家

ペベレル家 (Peverell family) は、中世に存在した、歴史的に極めて重要な純血の魔法使いの一族です。彼らは、伝説的な三つの強力な魔法道具である死の秘宝の最初の所有者として最もよく知られています。その物語は、魔法界の童話集『吟遊詩人ビードルの物語』に収録されている「三兄弟の物語」として語り継がれています。 この一族の血筋は、物語の二人の中心人物、ハリー・ポッターとヴォルデモート卿の両方に受け継がれており、二人の間の宿命的な対立に深い背景を与えています。

ペベレル家の歴史は、主に「三兄弟の物語」を通じて知られています。伝説によれば、アンチオク、カドマス、イグノタスという三人のペベレル兄弟が、旅の途中で危険な川を魔法で渡った際、彼らの魔法に感心した死そのものに出会ったとされています。死は三人を称えてそれぞれに一つずつ褒美を与えましたが、それこそが死の秘宝でした。

• 長男 アンチオク・ペベレル (Antioch Peverell): 最も好戦的だったアンチオクは、誰にも負けない最強の杖を望み、ニワトコの杖を手に入れました。しかし、彼はその杖の力を自慢したため、眠っている間に敵に殺害され、杖を奪われました。
• 次男 カドマス・ペベレル (Cadmus Peverell): 横柄な性格だったカドマスは、死をさらに辱めるため、死者を呼び戻す力を望み、蘇りの石を受け取りました。彼は若くして亡くした婚約者を呼び戻しましたが、彼女は現世に完全に属することができず、悲しみに満ちていました。絶望したカドマスは、彼女と真に結ばれるために自ら命を絶ちました。彼の血筋はゴーント家へと続き、最終的にトム・マールヴォロ・リドル、すなわちヴォルデモート卿へと繋がります。蘇りの石は、代々伝わる指輪にはめ込まれました。
• 三男 イグノタス・ペベレル (Ignotus Peverell): 最も謙虚で賢明だったイグノタスは、死を信用せず、その場を立ち去る際に死から身を隠すためのものを求めました。死はしぶしぶ自身のマントの一部を切り取り、透明マントを与えました。イグノタスはこのマントを使って死から隠れ続け、天寿を全うしました。彼は死ぬ間際にマントを息子に譲り、旧友のように死を迎え入れたとされています。彼の墓はゴドリックの谷にあり、ハリー・ポッターは彼の直系の子孫です。透明マントはペベレル家からポッター家へと、父から息子へと代々受け継がれていきました。

ペベレル家の最も重要な遺産は、死の秘宝そのものです。これらの物品は数世紀にわたって魔法界の歴史に影響を与え、多くの魔法使いを惹きつけ、破滅させてきました。 また、彼らの血筋は物語の根幹をなすテーマの一つです。ハリー・ポッターがイグノタスの、ヴォルデモート卿がカドマスの血を引いているという事実は、二人の対決が単なる善と悪の戦いではなく、同じ起源を持つ二つの家系の因縁の対決であることを示唆しています。ハリーは死を友として受け入れたイグノタスの資質を、ヴォルデモートは死を支配しようとしたカドマスの傲慢さを受け継いでいると解釈できます。

• アンチオク・ペベレル (Antioch Peverell): ペベレル三兄弟の長男。ニワトコの杖の最初の所有者。
• カドマス・ペベレル (Cadmus Peverell): ペベレル三兄弟の次男。蘇りの石の最初の所有者であり、ゴーント家の祖先。
• イグノタス・ペベレル (Ignotus Peverell): ペベレル三兄弟の三男。透明マントの最初の所有者であり、ポッター家の祖先。

“Peverell” は、実在するノルマン系の古い姓です。イングランドのダービーシャーにあるペヴァリル城 (Peveril Castle) は、ウィリアム征服王の私生児とされるウィリアム・ペヴェレル (William Peverel) にちなんで名付けられました。この歴史的な背景が、ペベレル家が古くから続く由緒ある一族であるという設定に深みを与えている可能性があります。

• アルバス・ダンブルドアは、「三兄弟の物語」はあくまで寓話であり、ペベレル兄弟が実際に死と会ったとは考えていませんでした。彼の推測では、三兄弟は極めて強力で才能豊かな魔法使いであり、死の秘宝は彼らが自ら作り出したものであるとされています。
• J.K. ローリングは、ハリー・ポッターとヴォルデモート卿がペベレル家を通じて遠い血縁関係にあることを認めています。（Pottermore）