偽のロケット
基本情報
- タイプ: 魂器の複製
- 製作者: 不明(レギュラス・アークタルス・ブラックによって作成された可能性が高い)
記述と外観
偽のロケットは、ヴォルデモート卿の魂器の一つである本物のスリザリンのロケットと寸分違わぬように作られた精巧な複製である。重々しい金のロケットで、表面には緑色の小石で蛇のようなSの字が華麗に飾られている。 本物の魂器がパーセルタングでしか開けられない強力な魔法で封じられていたのに対し、この偽のロケットは物理的に開けることが可能であった。しかし、固く閉ざされており、ハリー・ポッターがアルバス・ダンブルドアの死の悲しみのあまり床に落とした衝撃で、初めて開いた。中には本物の魂器の代わりに、羊皮紙の切れ端に書かれた手紙が折り畳まれて入っていた。
魔法の特性と用途
このロケット自体に特筆すべき魔法の力はない。その唯一にして最大の目的は、本物のスリザリンのロケットとすり替え、ヴォルデモート卿の目を欺くことにあった。 ロケットの内部に隠されていた手紙は、その製作者である「R.A.B.」ことレギュラス・アークタルス・ブラックがヴォルデモート卿に宛てたもので、魂器の秘密を暴き、それを破壊する意志を伝える内容であった。手紙には以下のように記されている。 闇の帝王へ あなたがこれを読むときには、私はとうに死んでいるでしょう。 しかし、あなたの秘密を暴いたのは私だということを知ってほしい。 本物の魂器を盗み、いずれそれを破壊するつもりです。 死に直面するにあたり、あなたが同等の相手とまみえるときに、再びただの定命の者に戻っていることを願います。 R.A.B. この手紙は、ダンブルドア以外にもヴォルデモート卿の不死の秘密に気づき、命を懸けて抵抗した人物がいたことを示す重要な証拠となった。
歴史
1979年頃、死喰い人であったレギュラス・アークタルス・ブラックは、ヴォルデモート卿が魂器を用いて自らの魂を不死にしているという秘密を知る。彼はヴォルデモート卿を裏切ることを決意し、本物のスリザリンのロケットを破壊するために、この偽のロケットを準備した。 レギュラスは屋敷しもべ妖精のクリーチャーを伴い、本物の魂器が隠されている洞窟へ向かった。彼は魂器を守る魔法の薬を自ら飲み干し、衰弱しながらも本物のロケットをこの偽物とすり替えた。そして、本物のロケットをクリーチャーに託して破壊を命じ、自身は湖のインフェリウスたちに水中に引きずり込まれ、命を落とした。 以来、この偽のロケットは十数年もの間、洞窟の水盆の底に沈んだままであった。
物語における役割
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の終盤、ハリー・ポッターとアルバス・ダンブルドアは、魂器を破壊するための危険な旅の末にこのロケットを発見する。ダンブルドアは多大な犠牲を払ってロケットを手に入れるが、その直後に亡くなってしまう。後にハリーは、これが偽物であり、ダンブルドアの犠牲が(少なくともこの魂器に関しては)無駄であったことを知り、深い絶望に陥る。 しかし、『ハリー・ポッターと死の秘宝』において、このロケットと「R.A.B.」の署名が入った手紙は、物語の重要な鍵となる。ハリー、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーは「R.A.B.」の正体を探り、それがシリウス・ブラックの弟であるレギュラス・アークタルス・ブラックであることを突き止める。 この発見がきっかけとなり、彼らはクリーチャーからレギュラスの英雄的な行動と本物のロケットの行方について聞き出すことに成功する。偽のロケットは、レギュラスの贖罪と、知られざるヴォルデモート卿への抵抗の象徴として、物語に深みを与えている。
幕後情報
- 映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、原作に忠実にこの偽のロケットとそれに付随する手紙が登場し、物語の重要な転換点として描かれている。(映画設定)