嘆きのマートル (Moaning Myrtle)

嘆きのマートル、本名マートル・エリザベス・ウォレンは、ホグワーツ魔法魔術学校 の2階女子化粧室に憑りついているゴーストである。生前はレイブンクロー寮に所属する魔女だった(Pottermore)。彼女は非常に陰鬱で惨めな性格で知られている。 物語において、マートルはいくつかの重要な局面で鍵となる役割を果たす。秘密の部屋の入口の発見に繋がり、三大魔法学校対抗試合の第二の課題でハリー・ポッターを助け、さらには苦悩するドラコ・マルフォイの話し相手にもなった。彼女は50年前にサラザール・スリザリンバジリスクによって殺害された、トム・リドルの最初の犠牲者の一人である。

マートルは1929年頃に生まれ、1940年にホグワーツ魔法魔術学校に入学した。彼女は自身の外見、特に眼鏡を理由に、同級生のオリーブ・ホーンビーから執拗ないじめを受けていた。 1943年6月13日、ホーンビーのからかいに傷ついたマートルは、2階の女子化粧室の個室に閉じこもって泣いていた。その時、彼女は男子生徒の声(トム・リドル)が奇妙な言語(パーセルタング)を話すのを耳にした。彼に出ていくよう言おうと個室のドアを開けたマートルは、そこにいた巨大なバジリスクの黄色い目と視線を合わせてしまい、即死した。彼女の遺体は、化粧室の床でホーンビーによって発見された。

死後、マートルはゴーストとして現世に留まることを選んだ。彼女の当初の目的は、自分をいじめていたオリーブ・ホーンビーに取り憑き、彼女の人生を惨めなものにすることだった。マートルはホーンビーの結婚式に至るまで執拗に彼女を追いかけ続けたが、最終的にホーンビーが魔法省に苦情を申し立てたため、マートルは自身の死んだ場所であるホグワーツに戻るよう命じられ、その化粧室に縛られることになった。

マートルは、ずんぐりとした体型で、生気のない長い髪、そして不機嫌そうな顔をしているゴーストとして描写される。彼女の最も特徴的なアイテムは、真珠のような白色をした厚い眼鏡である。彼女の姿は銀色がかって半透明である。

彼女の性格は非常に陰気で、すぐに気分を害し、自らの不幸に浸ることを好む。些細なことで大げさに泣きわめくため、「嘆きのマートル」というあだ名がついた。他人の不幸を喜ぶような意地悪な一面もあるが、ハリーやドラコのように苦しんでいる人物に対しては同情的な態度を見せることもある。非常に繊細で、特に自身の死や外見について触れられることを嫌う。

マートルはゴーストであるため、生者のような魔法は使えないが、ゴースト特有の能力を持っている。

  • 飛行と透過: 壁やドアなどの固体を自由に通り抜けることができ、空中を浮遊する。
  • 水の操作: 感情が昂ぶると、化粧室の水を激しく跳ねさせたり、パイプを鳴らしたりして洪水を起こすことがある。
  • 不死性: ゴーストであるため、物理的な手段で傷つけられたり、再び死んだりすることはない。
  • 眼鏡 (Glasses): 生前から死後のゴーストの姿に至るまで、マートルの外見を定義づける最も重要な物品。生前はいじめの原因となったが、ゴーストとなった今でも彼女の一部であり続けている。
  • ハリー・ポッター: マートルはハリーに特別な好意を抱いており、何度か彼を助けている。彼女なりのやり方でハリーに言い寄る場面もあった。
  • ドラコ・マルフォイ: 6年生の時、マートルは苦悩するドラコにとって唯一の話し相手となり、彼の恐怖や不安に耳を傾けた。
  • オリーブ・ホーンビー: 生前のマートルをいじめていた同級生。マートルがゴーストとして最初に行ったことは、彼女に復讐することだった。
  • トム・リドル (ヴォルデモート卿): マートルを殺害した張本人。彼女は死の瞬間まで、自分を殺したのが誰で、何が起こったのかを正確には理解していなかった。
  • マートル (Myrtle): ギンバイカ(銀梅花)という植物の名。ギリシャ神話では愛と美の女神アプロディーテーに捧げられる花だが、同時に死や冥界とも関連付けられることがある。
  • ウォレン (Warren): 「ウサギの飼育場」や「巣穴が密集した場所」を意味する。これは、バジリスクが潜んでいたホグワーツの地下に張り巡らされた配管網を暗示している可能性がある。
  • 映画での描写: 映画版では、女優のシャーリー・ヘンダーソンがマートルを演じた。彼女が『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で14歳のマートルの役を初めて演じた時、実年齢は36歳だった。
  • 原作以外の情報: マートルのフルネーム マートル・エリザベス・ウォレン (Myrtle Elizabeth Warren) および、彼女が所属していた寮がレイブンクローであることは、作者J.K.ローリングによって公式サイト Pottermore で明かされた(Pottermore)。