生ける屍の水薬
基本情報
記述と外観
生ける屍の水薬は、非常に強力な睡眠薬です。その調合は極めて難しく、ホグワーツ魔法魔術学校のN.E.W.T.レベルの魔法薬学の授業で扱われます。 標準的な教科書である『高級魔薬学』によれば、調合の最終段階で薬液は「滑らかなカシス色」になるとされています。しかし、セブルス・スネイプが学生時代に教科書に書き込んだ注釈に従って調合すると、より優れた効果を持つ薬が完成します。その場合、薬液はまず「薄いライラック色」になり、最後に指定された回数だけ逆時計回りにかき混ぜることで、「完璧な透明」な液体に変化します。
魔法特性と用途
この魔薬を飲んだ者は、まるで死んだかのような非常に深い眠りに陥ります。その効果は絶大で、調合が完璧であるほど、覚醒させることが困難になります。その強力さから、取り扱いには細心の注意が必要とされる危険な魔薬の一つです。 物語中では、この魔薬の解毒剤については言及されていませんが、その効果の強さから、単純な覚醒呪文では対抗できないと推測されます。
歴史
この魔薬の起源は不明ですが、少なくともリバチウス・ボレージ著の『高級魔薬学』にその調合方法が記載されていることから、古くから知られている魔薬です。 特筆すべきは、ホグワーツの学生であった頃のセブルス・スネイプが、この魔薬の標準的な調合手順を大幅に改良したことです。彼は、材料であるソポフォラス豆を銀の短剣の側面で潰して汁を絞り出す、かき混ぜる回数と方向を変更するといった独自の工夫を、自身の教科書の余白に「混血のプリンス」の名で書き込みました。この改良により、調合の効率と薬の効果が劇的に向上しました。
物語における役割
生ける屍の水薬は、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』において重要な役割を果たします。 ハリー・ポッターは6年生の魔法薬学の最初の授業で、ホラス・スラグホーンからこの魔薬を完璧に調合した者への褒美として、幸運の液体「福霊薬」を提示されます。ハリーは偶然手にした「混血のプリンス」の教科書に書かれた指示に従うことで、クラスで唯一完璧な生ける屍の水薬を完成させ、ハーマイオニー・グレンジャーをも凌ぎました。 この成功体験により、ハリーは「混血のプリンス」の才能に絶大な信頼を寄せるようになり、学年を通してその教科書を頼りにするようになります。また、この一件でスラグホーンに気に入られたことが、後にヴォルデモート卿の分霊箱に関する重要な記憶を引き出すための布石となりました。
舞台裏情報
* 『ハリー・ポッターと賢者の石』におけるセブルス・スネイプの最初の魔法薬学の授業で、彼はハリーに「アスフォデルの球根の粉末をニガヨモギの煎じ汁に加えると何になる?」と質問します。この答えこそが「生ける屍の水薬」であり、物語の非常に早い段階で伏線が張られていました。 * ヴィクトリア時代の花言葉において、アスフォデルは「後悔は墓場まで続く」という意味を持つユリの一種であり、ニガヨモギは「不在」や「深い悲しみ」を象徴します。このことから、この質問はスネイプがリリー・ポッターの死を深く悔やんでいることを象徴的に表現したものではないか、という解釈が広く知られています。