プリオリ・インカンタートが物語で最も象徴的に登場するのは、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のクライマックスです。リトル・ハングルトンの墓場で、復活したヴォルデモート卿とハリー・ポッターが決闘した際にこの現象が発生しました。 ハリーの杖とヴォルデモートの杖は、どちらもアルバス・ダンブルドアの不死鳥、フォーカスの尾羽を芯に持つ「兄弟の杖」でした。ハリーが武装解除呪文であるエクスペリアームスを、ヴォルデモートが死の呪いであるアバダ・ケダブラを同時に放った際、二つの呪文の光が空中で衝突し、杖同士が一本の金色の光の筋で繋がりました。 ハリーの意志の力によって、光の筋の中心にある光の玉がヴォルデモートの杖の方へ押しやられ、ヴォルデモートの杖は最近殺害した人々の「残像」または「こだま」を逆順に吐き出しました。現れた残像は以下の通りです。
これらの残像は一時的にヴォルデモートの動きを封じ、ハリーがポートキーを使って墓場から脱出するための貴重な時間を稼ぎました。 また、この現象とは別に、特定の杖が直前に使用した呪文を暴くためのプライオア・インカンタートという呪文も存在します。これはクィディッチ・ワールドカップの事件後、エイモス・ディゴリーがハリーの杖に対して使用し、モースモードル(闇の印)がその杖から放たれたものではないことを確認するために使われました。
プリオリ・インカンタートは意図的に引き起こせるものではなく、兄弟の杖同士が対決した際にのみ起こる偶発的な現象です。そのため、この現象自体を「学習する」ことは不可能です。この現象に関する知識は魔法界でも広く知られておらず、アルバス・ダンブルドアのような博識な魔法使いのみがその原理を理解していました。 この現象に対する直接的な対抗策は存在しません。唯一の回避策は、兄弟の杖を持つ者同士の決闘を避けることです。ヴォルデモート卿はこの現象を経験した後、ハリーを殺害するためにルシウス・マルフォイの杖を借りるなど、自身の杖を使うことを一時的に避けました。
この名称はラテン語に由来します。
これらを合わせると、「直前の呪文」という意味になり、杖が過去の呪文を逆順に映し出す効果を的確に表しています。