この呪文が物語で最も重要に使われたのは、『ハリー・ポッターと死の秘宝』においてです。ハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、そしてハーマイオニー・グレンジャーが人さらいの一団に追われ、捕まる寸前、ハーマイオニーがハリーの正体を隠すためにこの呪文を彼の顔に使用しました。 呪文の効果は絶大で、ハリーの顔は見る影もなく腫れ上がり、特徴的な稲妻形の傷跡もほとんど判別できなくなりました。この機転により、フェンリール・グレイバック率いる人さらい達は、彼が本物のハリー・ポッターであると即座に確信するには至りませんでした。結果として、一行は身元確認のためにマルフォイの館へ連行されることとなり、これが後の展開に繋がりました。この呪文による腫れは、マルフォイの館から脱出した後、しばらくして自然に引いていきました。
この呪文の習得難易度については具体的に述べられていませんが、ハーマイオニー・グレンジャーが緊急時に即座に、かつ効果的に使用したことから、ホグワーツ魔法魔術学校の中級程度の呪文学または闇の魔術に対する防衛術の授業で教えられる基本的なジンクスであると推測されます。 特定の対抗呪文は知られていません。防御としては、盾の呪文 (プロテゴ) のような一般的な防御呪文で防ぐことができると考えられます。呪文を受けてしまった場合、その効果は時間経過と共に薄れていくようです。
英語名は Stinging Jinx または Stinging Hex です。「Sting」は「(虫などが)刺すこと」や「刺すような痛み」を意味し、呪文の効果を直接的に表現しています。 日本語名の「刺し傷の呪い」も同様に、その効果を的確に翻訳したものです。「刺し傷」がもたらす痛みと腫れという現象をそのまま名前に冠しています。
映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、この場面が忠実に映像化されています。ハーマイオニーが呪文を唱えると、ハリーの顔が瞬時に、そして劇的に腫れ上がっていく様子が視覚的に描かれており、原作の描写がより強調されています。(映画設定)