アミカス・カロー

アミカス・カロー (Amycus Carrow) は、純血の魔法使いであり、ヴォルデモート卿に仕える食死徒の一員である。双子の姉妹であるアレクト・カローと共に、第二次ウィザーディング戦争で重要な役割を果たした。特に、セブルス・スネイプホグワーツ魔法魔術学校の校長を務めていた時期には、闇の魔術の教授および副校長として生徒たちに恐怖政治を敷いた。彼の性格は残忍かつサディスティックであり、物語におけるヴォルデモート陣営の非道な性質を象徴する人物の一人である。

アミカス・カローの活動が明確に描かれるのは、第二次ウィザーディング戦争の後半である。 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の終盤、天文塔の戦いにおいて、彼は姉のアレクト・カローと共にホグワーツ魔法魔術学校に侵入した食死徒の一団に加わっていた。この戦いの最中、彼はハリー・ポッターによって呪いをかけられ、気絶させられている。 『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、ヴォルデモート卿が魔法省を掌握した後、アミカスはホグワーツの「防衛術」の教授に任命される。しかし、彼が教えたのは防衛術ではなく、紛れもない闇の魔術そのものであった。彼は生徒たちに対し、罰則として磔の呪い (クルーシアタス・カース) を使うことを強要し、抵抗する生徒たちを徹底的に弾圧した。姉のアレクトがマグル学の教授としてマグル出身者への憎悪を教える一方、アミカスは暴力と恐怖で学校を支配した。 ホグワーツの戦いの直前、彼はレイブンクローの塔に呼び出される。姉のアレクトがハリー・ポッターの存在に気づき、闇の印でヴォルデモート卿を召喚しようとした後、気絶させられたためである。現場に到着したアミカスは、ハリーの居場所をヴォルデモートに知らせるという虚偽の報告をしたのがレイブンクローの生徒たちのせいにして、自分への罰を免れようと画策する。この卑劣な提案に激怒したミネルバ・マクゴナガルが彼に立ち向かうと、アミカスは彼女の顔に唾を吐きかけた。その侮辱行為を目撃したハリーは、怒りのあまりアミカスに対して許されざる呪いの一つである磔の呪いを使用し、彼を無力化させた。その後、マクゴナガル教授が服従の呪い (インペリオ) をかけて彼を拘束し、戦いが終わるまで姉と共に縛り付けられた。

アミカスの外見は、ずんぐりとして塊のような男と描写されており、不気味でゆがんだにやにや笑いを浮かべている。彼の声はぜいぜいと喘ぐようだとされている。 彼の性格は極めて残忍、サディスティック、そして卑劣である。彼は自分より弱い立場の者、特にホグワーツの生徒たちを苦しめることに喜びを感じていた。また、ヴォルデモート卿の怒りを恐れており、自分の失態を生徒になすりつけようとするなど、自己中心的で臆病な一面も持つ。ミネルバ・マクゴナガルのような権威ある強力な魔女に対してさえ、侮辱的な態度を取ることから、彼の品性の欠如がうかがえる。

アミカスは有能な闇の魔術の使い手である。

  • 許されざる呪文: 彼は磔の呪いを熟知しており、罰則として生徒に使うだけでなく、授業で生徒たちにその使い方を教えていた。
  • 決闘: 彼は一定の決闘能力を持つが、物語の中では二度、ハリー・ポッターミネルバ・マクゴナガルによって比較的容易に打ち負かされている。天文塔ではハリーに呪文で気絶させられ、レイブンクローの塔ではハリーの磔の呪いを受けた後、マクゴナガルに完全に制圧された。
  • アレクト・カロー: 彼の姉であり、最も緊密な協力者。二人は「カロー兄妹」として知られ、ホグワーツで恐怖政治を敷いた。
  • ヴォルデモート卿: 彼が忠誠を誓う主人。アミカスはヴォルデモートを深く恐れており、彼の命令を遂行した。
  • セブルス・スネイプ: スネイプが校長だった期間、アミカスは彼の部下として副校長を務めた。しかし、彼らの間に信頼関係があったとは考えにくい。
  • ミネルバ・マクゴナガル: ホグワーツにおける彼の主要な敵対者の一人。彼がマクゴナガルに唾を吐きかけた行為は、彼の敗北の直接的な引き金となった。
  • アミカス (Amycus): ギリシャ神話に登場するベブリュケス人の王「アミュコス」に由来する可能性がある。アミュコスは残忍なボクサーで、自分の国に来る者すべてに試合を挑み、殺害していた。この名前は、アミカス・カローの暴力的でいじめ好きな性格を暗示している。
  • カロー (Carrow): 「腐肉」を意味する “carrion” に由来する可能性が指摘されている。これは、死や腐敗を信奉する食死徒にふさわしい姓である。
  • 映画版での描写: 映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』では、アミカスとアレクトの最期が原作と異なる。レイブンクローの塔での対決シーンで、彼はミネルバ・マクゴナガルと対峙するが、スネイプがマクゴナガルの呪文を反射し、その呪文がカロー兄妹に当たって無力化されるという展開になっている。これは、スネイプが陰で生徒を守っていたことを示唆する映画独自の演出である。(映画設定)