許されざる呪文
概要
許されざる呪文 (Unforgivable Curses) は、魔法界で最も強力かつ邪悪とされる三つの闇の魔術の総称です。これらの呪文は、アバダ・ケダブラ(死の呪い)、クルーシアタス・カース(磔の呪い)、そしてインペリウス・カース(服従の呪い)から構成されます。 これらの呪文の使用は魔法省によって固く禁じられており、人間に対して一度でも使用した場合、アズカバンでの終身刑が科せられます。その非人道的な性質から、これらの呪文はヴォルデモート卿と彼の追随者である死喰い人たちが好んで使用する象徴的な魔法となりました。
三つの呪文
アバダ・ケダブラ (死の呪い)
- 呪文 (Incantation): アバダ・ケダブラ
- 効果 (Effect): 標的の命を即座に、苦痛なく奪います。物理的な損傷の痕跡を一切残しません。
- 光芒の色 (Light Color): 眩い緑色の閃光。
- 特徴 (Characteristics):
- あらゆる防御呪文で防ぐことができない、防御不能の呪いです。
- 物理的な障害物で遮るか、呪文を回避することでのみ防ぐことが可能です。
クルーシアタス・カース (磔の呪い)
- 呪文 (Incantation): クルーシオ
- 効果 (Effect): 標的に耐え難いほどの激しい肉体的苦痛を与え続けます。この呪いは死をもたらすものではありませんが、拷問のために使用されます。
- 光芒の色 (Light Color): 赤い閃光が放たれることが多いです。
- 特徴 (Characteristics):
- 呪文を効果的に作用させるためには、術者が心から標的に苦痛を与えたいと望む、サディスティックな意図が必要です。
- 長時間この呪いに晒されると、フランク・ロングボトムとアリス・ロングボトムのように、永続的な精神崩壊をきたす可能性があります。
インペリウス・カース (服従の呪い)
- 呪文 (Incantation): インペリオ
- 効果 (Effect): 標的の精神を完全に支配し、術者の意のままに操ります。かけられた者は幸福で穏やかな空白状態に陥り、命令に疑問を抱くことなく従います。
- 光芒の色 (Light Color): ほとんどの場合、光は見られません。(映画設定では、かすかな白い光として描かれることがあります)
- 特徴 (Characteristics):
- 並外れて強い意志を持つ魔法使いは、この呪いに抵抗し、最終的に打ち破ることが可能です。ハリー・ポッターは4年生の時にアラスター・ムーディ(正体はバーテミウス・クラウチ・ジュニア)の指導の下でこの呪いへの抵抗力を身につけました。
歴史と法的地位
1717年、魔法省はこれら三つの呪文を「許されざる呪文」として公式に分類し、その使用を厳しく禁止しました。人間への使用に対する罰則は、アズカバンでの自動的な終身刑と定められています。 しかし、歴史上、例外的な状況下でその使用が許可されたことがあります。
物語における重要性
許されざる呪文は、物語全体を通して善と悪の境界線を明確にする重要な要素です。これらの呪文を躊躇なく使用することは、ヴォルデモート卿とその信奉者たちの残虐性と道徳の欠如を象徴しています。 一方で、ハリー・ポッター自身も極限状況下でこれらの呪文を使用(または使用を試み)ました。シリウス・ブラックを殺された直後、彼はベラトリックス・レストレンジにクルーシアタス・カースを使用しますが、真の残虐な意図が欠けていたため、完全な効果は発揮されませんでした。しかし、後にグリンゴッツ魔法銀行への侵入の際には、ゴブリンのボグロッドと魔法使いのトラバースに対し、インペリウス・カースを成功させています。これは、戦争がいかにして善良な人物でさえも道徳的に困難な選択を強いるかを示しています。
語源と幕後情報
- Avada Kedavra: 作者J.K.ローリングによれば、この言葉は元々アラム語で「私が話すように、モノよ滅びよ」という意味を持ち、「アブラカダブラ」の原型であるとされています。(作者インタビュー)
- Crucio: ラテン語で「私は拷問する」または「私は十字架にかける」を意味します。
- Imperio: ラテン語の “impero”(私は命令する)または “imperium”(命令、権力)に由来します。