グリム

グリム (The Grim) は、魔法界において死の最悪の前兆とされる、巨大な幽霊犬です。その姿は巨大な黒い犬であり、墓場に出没すると言われています。占い学の教科書である『未来の霧を晴らす』にも、死の前兆として記載されています。 物語においては、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でハリー・ポッターの運命を暗示する不吉な存在として繰り返し登場します。しかし、ハリーが目撃していたグリムの正体は、実際には彼の名付け親であるシリウス・ブラックが変身した動物もどきの姿であったことが後に判明します。

  • 外見: 石炭のように爛々と輝く目を持つ、巨大で亡霊のような黒い犬として描写されます。
  • 伝承: 魔法界の伝承では、グリムは墓場をうろつく存在とされ、これを目撃した者には間もなく死が訪れると信じられています。ロン・ウィーズリーは、自身のおじであるビリウスがグリムを見てから24時間以内に亡くなったと語っています。この迷信は魔法界に広く浸透しており、占い学の授業でシビル・トレローニー教授がハリーのティーカップの茶葉にグリムを見出した際には、クラスメートの多くが恐怖を抱きました。

グリムは、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の物語全体を通じて、ハリー・ポッターに死が迫っていることを示す象徴として機能します。

  1. 最初の目撃: ハリーがダーズリー家でマージおばさんを膨らませてしまった後、マグノリア・クレセントで初めてグリムらしき巨大な黒犬を目撃します。この犬の正体は、脱獄しハリーの様子を見に来たシリウス・ブラックでした。
  2. 占い学の授業: ホグワーツ魔法魔術学校での最初の占い学の授業で、シビル・トレローニー教授はハリーの茶葉にグリムの形を見出し、彼の死を予言します。この予言は学年中に広まり、ハリーに精神的なプレッシャーを与えました。
  3. クィディッチの試合: ハッフルパフとのクィディッチの試合中、ハリーは観客席にいる黒犬の姿をグリムと見間違え、その直後に吸魂鬼 (ディメンター) の影響で箒から転落しました。
  4. 真相の判明: 物語の終盤、叫びの屋敷において、ハリーがこれまで目撃してきたグリムが、未登録の動物もどきであるシリウス・ブラックの犬の姿であったことが明らかになります。シリウスは、ハリーを守り、ピーター・ペティグリューを捕らえるために、犬の姿で行動していたのです。ハーマイオニー・グレンジャーは、一貫してグリムの存在や占い学の予言に懐疑的な立場を取っていました。

「グリム (Grim)」という名前は、イギリス、特にイングランド北部の民間伝承に登場する「チャーチ・グリム (Church Grim)」に由来すると考えられます。チャーチ・グリムは教会の墓地を守る守護霊であり、しばしば大きな黒い犬の姿で現れるとされています。この伝承上の存在もまた、死の前兆と関連付けられることがあり、作中の設定と深く結びついています。

  • 映画版『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』では、グリムは非常に痩せこけた、骨張った姿で描かれており、原作の「大きな黒犬」という描写よりも不吉さが強調されています。(映画設定)
  • グリムのモチーフである「不吉な黒い犬」は、イギリスの民間伝承で非常にポピュラーな存在であり、「ブラック・シャック (Black Shuck)」など、地域ごとに様々な名前で知られています。