ゲラート・グリンデルバルド

ゲラート・グリンデルバルド (Gellert Grindelwald) は、ヴォルデモート卿が台頭する以前の時代において、最も強力で危険な闇の魔法使いの一人と見なされている人物です。かつてはアルバス・ダンブルドアの親友であり、共に死の秘宝を探し求めましたが、後に思想の違いから決別し、伝説的な決闘でダンブルドアに敗れました。彼は「より大きな善のために (For the Greater Good)」というスローガンを掲げ、魔法族による世界支配を目指す革命を主導しました。物語においては、ダンブルドアの過去を形作る重要な存在であり、長老の杖の来歴を語る上で不可欠な人物として描かれています。

グリンデルバルドは、闇の魔術に対して寛容な校風で知られるダームストラング専門学校に在籍しました。彼は並外れた才能を持つ生徒でしたが、常軌を逸した危険な実験を行ったために退学処分となりました。その後、彼は大叔母である魔法史家のバチルダ・バグショットを頼ってイギリスのゴドリックの谷に移り住み、そこで若き日のアルバス・ダンブルドアと出会います。二人は互いの才能に惹かれ合い、瞬く間に親友となりました。彼らは共に死の秘宝を探し、魔法使いがマグルを支配する新たな世界の到来を夢見ていました。

二人の計画は、アルバスの弟であるアバーフォース・ダンブルドアの反対に遭います。口論は三者を巻き込む決闘へと発展し、その結果、妹のアリアナ・ダンブルドアが誰の呪文によるものか不明なまま命を落としました。この悲劇をきっかけにグリンデルバルドはイギリスから逃亡し、ダンブルドアとの関係は完全に破綻しました。その後、彼はヨーロッパ大陸で勢力を拡大し始め、有名な杖作りであるグレゴロビッチから長老の杖を盗み出しました。彼は死の秘宝のシンボルを自らの印とし、多くの支持者を集めて魔法界に恐怖を広げましたが、ダンブルドアを恐れてかイギリスには手を出しませんでした。

グリンデルバルドの脅威が頂点に達した1945年、彼を止められる唯一の魔法使いであるアルバス・ダンブルドアとの直接対決が実現しました。この歴史的な決闘は数時間に及んだとされ、結果はダンブルドアの勝利に終わりました。長老の杖の新たな所有者となったダンブルドアは、グリンデルバルドを彼自身が築いた難攻不落の牢獄、ヌルメンガードに投獄しました。 それから約53年後の1998年、長老の杖の行方を追うヴォルデモート卿ヌルメンガードの独房にいるグリンデルバルドを訪れます。しかし、老いたグリンデルバルドは杖の情報を渡すことを拒否し、ヴォルデモートを嘲笑したため、その場で殺害されました。

若い頃のグリンデルバルドは、陽気で野性的な雰囲気を持つ、金髪の美しい青年であったとされています。老年期には、やせ衰えて骸骨のようになり、目は落ち窪み歯もほとんど残っていない姿でヴォルデモートと対面しました。 性格は極めて知的で野心的、そしてカリスマ性に富んでいます。彼は自身の掲げる理想「より大きな善のために」を信じ、目的のためなら冷酷な手段も厭わない思想家でした。しかし、最期にはヴォルデモート卿に屈しなかったことから、彼の中にはある種の悔恨や誇りが残っていたことが示唆されています。

  • 決闘能力: アルバス・ダンブルドアに次ぐ、史上最強クラスの魔法使いと評されています。長老の杖を所有していた時期の彼の力は計り知れず、ダンブルドアとの決闘は魔法史に残る伝説となっています。
  • 闇の魔術: ダームストラング専門学校在学中から闇の魔術に深い知識と才能を示しており、非常に危険な魔法を使いこなしました。
  • 予見能力: 彼は予言者 (Seer) でもあり、未来の出来事を幻視する能力を持っていました。(『ファンタスティック・ビースト』シリーズ)
  • 魔杖: 彼の最も有名な杖は、グレゴロビッチから盗んだ死の秘宝の一つ、長老の杖です。1945年にダンブルドアに敗れるまで、彼が所有していました。
  • 長老の杖: 死の秘宝の一つ。グリンデルバルドがその所有者として広く知られており、彼の力の象徴でした。
  • 死の秘宝のシンボル: グリンデルバルドが自身の印として使用したため、ヨーロッパの魔法界ではこのシンボルが闇の魔術と関連付けられるようになりました。ビクトール・クラムはこの印を「グリンデルバルドの印」として知っていました。
  • ゲラート (Gellert): ハンガリー語圏における「ジェラール (Gerard)」の形で、「槍で武装した勇敢な者」を意味します。
  • グリンデルバルド (Grindelwald): スイスに実在する村の名前です。また、イギリスの叙事詩『ベオウルフ』に登場する怪物「グレンデル (Grendel)」を連想させ、闇の魔法使いとしての彼の性質を暗示している可能性があります。
  • J.K.ローリングはインタビューで、ダンブルドアがグリンデルバルドに対して恋愛感情を抱いていたことを明言しています。
  • 彼の物語は、映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズで中心的なプロットとして詳細に描かれており、彼の思想、支持者、そしてダンブルドアとの複雑な関係が深く掘り下げられています。
  • 映画で描かれた、左右で色の違う瞳(ヘテロクロミア)やプラチナブロンドの髪といった外見は、映画独自の設定です。原作では若い頃は「金髪」とだけ記述されています。