トラップドア

ホグワーツ魔法魔術学校の3階、立ち入り禁止の廊下に設置された木製の落とし戸。床に埋め込まれており、金属製のリング状の取っ手がついている。このトラップドアは、巨大な三頭犬であるフラッフィーによって守られており、その真下に位置している。 見た目はごく普通の落とし戸だが、その先には賢者の石を守るための一連の魔法の防衛設備が隠されている。

このトラップドアの主な機能は、賢者の石が隠された地下室への唯一の入り口を塞ぐことである。 トラップドア自体に特別な魔法がかけられているという記述はないが、その真の「鍵」は物理的なものではなく、番人であるフラッフィーを無力化することにある。フラッフィーは音楽を聴くと深い眠りに落ちる習性があり、これを利用しなければトラップドアに近づくことさえできない。一度フラッフィーが眠れば、トラップドアは誰でも開けることが可能になる。 トラップドアを開けると、その下には暗い垂直の通路が口を開けており、侵入者は遥か下の階層へと落下する。落下した先には、ポモーナ・スプラウト教授が仕掛けた悪魔の罠が待ち受けている。

1991年、ヴォルデモート卿による強奪の危険から賢者の石を保護するため、グリンゴッツ魔法銀行の金庫からホグワーツ魔法魔術学校城内に移された際に、アルバス・ダンブルドアの指揮の下で設置された。これは、ミネルバ・マクゴナガルフィリウス・フリットウィックセブルス・スネイプポモーナ・スプラウト、そしてクィリナス・クィレルといった教職員たちが協力して作り上げた一連の防衛網の最初の関門であった。 学年度の終わり、クィリナス・クィレル教授(実際にはヴォルデモートに寄生されていた)がこのトラップドアを通過し、賢者の石を盗み出そうとした。その後、彼を追ってハリー・ポッターロン・ウィーズリーハーマイオニー・グレンジャーもこのトラップドアを通り抜けた。

ハリー・ポッターと賢者の石』において、物語の中核をなす謎の象徴として、またクライマックスへの入り口として極めて重要な役割を果たす。

  • 謎の提示: 学期初頭にアルバス・ダンブルドアが「3階の右側の廊下」への立ち入りを禁じたことで、生徒たちの好奇心を掻き立て、城内に何か重要なものが隠されていることを示唆した。
  • 調査のきっかけ: ハリー・ポッターたちがアーガス・フィルチから逃れる際に偶然この廊下に迷い込み、フラッフィーとトラップドアを発見したことが、賢者の石を巡る彼らの調査を開始させる直接のきっかけとなった。
  • 突破口: ルビウス・ハグリッドがうっかり「音楽を聴かせればコロッと眠る」と漏らしたことで、ハリーたちは最初の障害を突破する方法を知ることになる。
  • クライマックスへの扉: 物語の終盤、ハリー、ロン、ハーマイオニーは賢者の石を守るため、自らの意志でこのトラップドアをくぐる決意をする。これは、彼らが子供時代の無邪気な冒険から、真の危険と対峙する段階へと移行したことを示す象徴的な瞬間である。
  • トラップドアを三頭犬が守るという構想は、ギリシャ神話に登場する冥界の番犬「ケルベロス」への明確なオマージュである。作中でもルビウス・ハグリッドは、フラッフィーを「漏れ鍋で会ったギリシャ人の知り合いから買った」と語っている。
  • 映画版では、ハリーたちがフラッフィーの巨大な足の一つをどかしてトラップドアのリングハンドルを掴むという、より視覚的に緊張感のある描写が追加されている。(映画の設定)