闇の帳

闇の帳

  • タイプ (Type): 魔法的建造物、生と死の間のポータル
  • 所有者 (Owners): イギリス魔法省 神秘部
  • 製作者 (Maker): 不明(古代から存在)

闇の帳は、イギリス魔法省神秘部内にある「死の部屋」と呼ばれる円形の部屋の中央に存在する、古代の魔法的アーティファクトです。石造りの演台の上に、ひびの入った古い石のアーチが立っており、そのアーチからボロボロになった黒いベール、すなわち「帳」が吊り下がっています。部屋の中は空気が静止しているにもかかわらず、帳はまるでそよ風に吹かれているかのように絶えず静かにはためいています。 この帳は、死と密接に関連しており、その存在は多くの謎に包まれています。

闇の帳の最も顕著な特性は、生者の世界と死者の世界を隔てる境界、あるいは一方通行のポータルとして機能することです。一度この帳を通り抜けた者は、二度と生者の世界に戻ることはできません。

  • 囁き声: 帳に近づくと、囁き声や呟きのような音が聞こえることがあります。しかし、この音は死を間近で目撃した経験のある者にしか聞こえません。ハリー・ポッタールーナ・ラブグッドは明確に声を聞き取ることができましたが、ハーマイオニー・グレンジャーロン・ウィーズリーには何も聞こえませんでした。これは、死を理解し、受け入れた者にのみ死の世界との繋がりが感じられることを示唆しています。
  • 一方通行のポータル: 物理的に帳を通り抜けると、その人物は即座に死亡し、姿を消します。遺体は残りません。これは、単なる死ではなく、魂が次の次元へと「進む」ことを意味します。首なしニックは後に、ほとんどの魔法使いは死後、幽霊として現世に留まるのではなく「先へ進む」ことを選ぶと説明しており、この帳がその「先」への入り口であることが示唆されています。
  • 研究対象: この帳は神秘部で働くアンセンタブル (Unspeakables) たちによって長年研究されていますが、その起源や魔法の完全な仕組みは未だ解明されていません。

闇の帳の正確な起源は不明ですが、非常に古くから存在していると考えられています。その神秘的な性質から、魔法省の設立当初から神秘部の最も重要な研究対象の一つとして厳重に保管されてきました。それは魔法界における「死」という根源的な謎を物理的に体現した存在です。

闇の帳は、小説『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のクライマックスで極めて重要な役割を果たします。 神秘部の戦いの最中、ハリー・ポッターの名付け親であるシリウス・ブラックは、いとこのベラトリックス・レストレンジが放った呪文(原文では呪文名は明記されていないが、赤い光線とされる)を受けてバランスを崩し、この闇の帳の後ろへと倒れ込みました。彼は帳を通り抜けた瞬間に姿を消し、帰らぬ人となりました。 この出来事はハリーに計り知れない悲しみと衝撃を与え、彼が初めて身近な保護者を失うという過酷な経験となりました。また、魔法でも死者を生き返らせることはできないという、物語全体を貫く厳然たる事実を読者に突きつけました。リーマス・ルーピンがハリーを制止し、「あちら側へ行ったら、もう戻ってはこられない」と告げた言葉は、この帳の不可逆的な性質を明確に示しています。

  • 原作と映画の相違: 原作では、シリウス・ブラックベラトリックス・レストレンジの呪文で直接殺されたわけではなく、呪文によって体勢を崩して偶発的に帳に落ちたことで死亡します。一方、映画版では、ベラトリックスが明確にアバダ・ケダブラの呪文を唱え、緑の閃光がシリウスに命中して死亡し、その後で帳に吸い込まれるように描かれています。(映画設定)
  • 作者の解説: J.K. ローリングは、闇の帳が死の世界との境界線であることを認めています。人が帳の向こう側から聞く声は、その人自身の信じる心や死者への想いが反映されたものであると示唆しています。(作者インタビュー)