カルカロフ

イゴール・カルカロフ

イゴール・カルカロフは、闇の魔術で悪名高いダームストラング専門学校の校長であり、元死喰い人である。物語では主に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で登場し、ホグワーツ魔法魔術学校で開催された三大魔法学校対抗試合の審判員の一人を務めた。自身の保身を最優先する利己的で臆病な性格が特徴であり、ヴォルデモート卿の失脚後、アズカバン行きを免れるためにかつての仲間を魔法省に密告した過去を持つ。この裏切り行為が、彼の運命を決定づけることとなる。

カルカロフは第一次魔法戦争中、ヴォルデモート卿に仕える死喰い人として活動していた。しかし、ヴォルデモートの敗北後、高名な闇祓いであるアラスター・ムーディによって捕縛され、終身刑となるべくアズカバンに投獄された。 彼は自由を得るため、バーテミウス・クラウチ・シニアが主宰する裁判で、他の死喰い人に関する情報を提供することを申し出た。彼はアントニン・ドロホフオーガスタス・ルックウッドといった重要な人物の名を挙げ、魔法省に多大な貢献をした。その結果、彼は釈放され、後にダームストラング専門学校の校長の地位に就いた。この一連の出来事は、ハリー・ポッターアルバス・ダンブルドア憂いの篩で見た記憶の中で明らかになる。

1994年、カルカロフはダームストラング専門学校の代表選手ビクトール・クラムを率いてホグワーツ魔法魔術学校を訪れ、三大魔法学校対抗試合の審判を務めた。彼は試合中、一貫してクラムを贔屓し、他の選手(特にハリー)には不当に低い点数を与えた。 大会期間中、彼の左腕に刻まれた闇の印が次第に濃くなっていくことに気づき、カルカロフはヴォルデモートの復活が近いことを悟り、極度の恐怖に苛まれる。彼は同じく元死喰い人であるセブルス・スネイプに何度も接触を図るが、スネイプからは冷たくあしらわれ続けた。

三大魔法学校対抗試合の最終課題の夜、ヴォルデモートが完全に復活を遂げると、カルカロフは報復を恐れて即座に逃亡した。彼は死喰い人の仲間を裏切ったため、ヴォルデモート卿の赦しを得られる見込みがないことを理解していた。 彼の死は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の冒頭で言及されている。逃亡から約1年後、彼は北の果ての小屋で死体となって発見された。その小屋の上空には闇の印が浮かんでおり、彼が裏切りの代償として死喰い人によって殺害されたことを示していた。

カルカロフはアルバス・ダンブルドアのように背が高く痩せていたが、髪は白く短く、ヤギのような短いあごひげを生やしていた。彼の声はねっとりとしており、笑みは浮かべるものの、その笑いは冷たい青い目には決して届かなかった。ホグワーツ滞在中は、艶のある銀灰色の毛皮を好んで身につけていた。

彼の性格は、自己中心的かつ臆病であり、常に権力者に媚びへつらう一方で、自分より弱いと見なした者には尊大な態度をとる。ビクトール・クラムのような有名で有能な生徒を寵愛するが、それは学校の名声を高めるための道具としか見ていない節がある。彼の行動原理は徹頭徹尾、自己保身であり、危険が迫ると仲間を見捨ててでも生き延びようとする卑劣さを持っている。

ダームストラング専門学校の校長を務め、かつては死喰い人の一員であったことから、カルカロフが強力な魔法使い、特に闇の魔術に長けていたことは疑いようがない。しかし、作中で彼が具体的にどのような魔法を使用したかについての詳細な描写はない。

  • イゴール (Igor): 東ヨーロッパやロシアで一般的な男性名であり、ダームストラング専門学校の地理的なイメージと一致する。
  • カルカロフ (Karkaroff): ロシア語によく見られる姓の語尾「-off」を持つ。語幹の「Karkar」は、ホオジロザメの学名 Carcharodon carcharias を連想させる。これは彼の冷酷で捕食者のような性質を暗示している可能性がある。
  • 映画版『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』では、セルビア人俳優のプレドラグ・ビエラク (Predrag Bjelac) が演じた。(映画設定)