ビーズのついた小さなバッグ

ビーズのついた小さなバッグ

一見すると、紫色のビーズで飾られたごく普通の小さなハンドバッグ。しかし、その内部は無痕伸展咒 (Undetectable Extension Charm) によって魔法的に拡張されており、外見からは想像もつかないほどの広大な空間を持っている。この魔法のおかげで、大量の物品を収納してもバッグの重さはほとんど変わらない。

このバッグの最も重要な魔法特性は、ハーマイオニー・グレンジャー自身がかけた無痕伸展咒にある。この呪文により、バッグの内部容量は物理的な制約を超えて拡張されている。ハーマイオニーはこのバッグを、ヴォルデモート卿魂器 (Horcrux) を探す旅に必要なあらゆるものを持ち運ぶための、いわば移動式の拠点として活用した。 バッグの中には、トリオが一年近くにわたる逃亡生活を送るために不可欠な、多種多様な物品が収められていた。

ただし、中身が雑然としているため、所有者であるハーマイオニーでなければ目的のものを素早く取り出すことは困難だった。

このバッグ自体はありふれたものだったが、1997年の夏、ハーマイオニー・グレンジャーが来るべき魂器探しの旅に備え、自ら無痕伸展咒をかけて改造した。彼女はビル・ウィーズリーフラー・デラクールの結婚式に参列する前から、いつ何が起きてもすぐに行動できるよう、このバッグに必要なものをすべて詰め込んで準備していた。 その予見通り、結婚式の最中に魔法省が陥落し、死喰い人 (Death Eaters) が襲撃してきた際、ハーマイオニーはこのバッグのおかげでハリーとロンと共に即座に脱出することができた。以降、このバッグはゴドリックの谷での戦闘、マルフォイの館からの脱出、そしてホグワーツの戦いまで、トリオの旅に欠かせない生命線として機能し続けた。

ハリー・ポッターと死の秘宝』において、このビーズ付きバッグは物語の進行を支える極めて重要なアイテムである。それは単なる便利な道具ではなく、ハーマイオニーの優れた計画性、準備周到さ、そして仲間を守ろうとする強い意志の象徴と言える。 このバッグがなければ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は、過酷な逃亡生活を生き延び、魂器を破壊するという困難な使命を達成することは不可能だっただろう。シェルター、救急箱、図書館、そして宝物庫としての役割を一身に担い、トリオの旅を物理的にも精神的にも支え続けた。

  • 無痕伸展咒を個人的な物品、特にバッグなどに使用して容量を増やすことは、魔法省の法律で厳しく規制されている。これは、魔法界の物品がマグルの世界に不用意に持ち込まれるのを防ぐためである。ハーマイオニーはこの規則を破ったことになるが、それは来るべき戦いのためのやむを得ない選択だった。