フィニアス・ナイジェラス・ブラック

フィニアス・ナイジェラス・ブラック(Phineas Nigellus Black, 1847年 – 1925年)は、魔法界で最も古く、最も裕福な純血の魔法使いの一族であるブラック家出身の魔法使いであり、スリザリン寮出身の元ホグワーツ魔法魔術学校校長です。彼は「ホグワーツ史上最も人気がなかった校長」として知られています。 死後、彼の肖像画がホグワーツの校長室と、ブラック家の邸宅であったグリモールド・プレイス十二番地の二箇所に飾られました。この二つの肖像画間を自由に行き来できる能力により、彼は第二次魔法戦争において、アルバス・ダンブルドア不死鳥の騎士団のための不本意ながらも重要な情報伝達役を果たしました。彼は純血の優越性を固く信じる皮肉屋で気難しい性格でしたが、校長としての義務には忠実でした。

フィニアス・ナイジェラスの生前の詳細な経歴については、原作小説内ではほとんど語られていません。彼がホグワーツ魔法魔術学校の校長を務め、生徒たちから極めて不人気であったこと、そして純血主義的な思想を持っていたことが強調されています。 彼の物語における重要な役割は、彼の死後に肖像画として始まりました。

  • 第二次ウィザーディング戦争
    1. 1995年、不死鳥の騎士団が本部をグリモールド・プレイス十二番地に再設置した際、彼の肖像画は騎士団の活動を不満げに監視していました。アルバス・ダンブルドアの命令により、彼は校長室の肖像画とグリモールド・プレイスの肖像画との間を行き来し、メッセージを伝える役割を担いました。彼はアーサー・ウィーズリーナギニに襲われたことを知らせる緊急の伝言を運び、シリウスの命を救う一助となりました。
    2. 彼は孫のシリウス・ブラックが一族の純血の教えに背いたことを「一族の恥」と見なしており、彼に対してしばしば軽蔑的な態度を取りました。
    3. 1997年、ハリー・ポッターロン・ウィーズリーハーマイオニー・グレンジャーが分霊箱を探す旅に出た際、ハーマイオニーはグリモールド・プレイスにあった彼の肖像画を魔法で拡張されたビーズバッグに入れて持ち出しました。
    4. 当初、彼は3人への協力を拒否しましたが、ハーマイオニーの機転と説得により、セブルス・スネイプが校長となったホグワーツ内部の情報を断片的に伝えるようになりました。彼の情報から、ハリーたちはグリフィンドールの剣が偽物とすり替えられていたことや、スネイプの動向を知ることができました。彼はハーマイオニーが「マッドブラッド」という言葉に毅然と反論した際に、その気概を(不本意ながらも)評価するような一面も見せました。

フィニアス・ナイジェラスの肖像画は、抜け目のない、細い顔立ちで、黒い髪と黒い瞳、そして先のとがった短い顎ひげを持つ人物として描かれています。 彼の性格は非常に特徴的です。

  • 純血主義者 (Pure-blood Supremacist)
    1. 彼はブラック家の「Toujours Pur」(常に純血)という家訓を誇りにしており、マグル生まれや「血を裏切る者」を激しく軽蔑しています。彼はハーマイオニーを「マッドブラッド」と呼ぶことを躊躇しません。
  • 皮肉屋で気難しい (Sarcastic and Cantankerous)
    1. 彼は常に不機嫌で、特に若者に対して辛辣な態度を取ります。彼は生徒たちを「忌まわしい生き物」と呼び、彼らの行動や感情表現をくだらないものと見なしています。
  • 義務への忠誠 (Loyalty to Duty)
    1. 彼の最も重要な性格的特徴の一つは、個人的な信条や感情に関わらず、現職のホグワーツ魔法魔術学校校長には絶対的に忠実であることです。彼はアルバス・ダンブルドアの価値観を全く理解していませんでしたが、その命令には従いました。同様に、セブルス・スネイプが校長に就任した際も、彼の命令に従って行動しました。

彼の生前の魔法能力については具体的に記述されていませんが、ホグワーツ魔法魔術学校の校長に任命されたことから、非常に有能な魔法使いであったと推測されます。 肖像画としての彼の能力は物語において重要です。

  • 肖像画間の移動 (Inter-portrait Travel)
    1. 魔法で描かれた肖像画の人物は、自身が描かれた他の肖像画へと自由に移動することができます。フィニアス・ナイジェラスはホグワーツとロンドンの両方に肖像画を持っていたため、この能力が長距離の即時通信手段として利用されました。
  • 肖像画 (Portrait)
    1. 彼の最も重要な「物品」は、ホグワーツ校長室とグリモールド・プレイス十二番地に存在する二つの肖像画です。これらは彼の意識と人格を保持しており、物語の重要なプロット装置として機能しました。
  • ブラック家 (The Black Family)
    1. シリウス・ブラックの曾々祖父にあたります。彼はブラック家の純血主義の象徴的存在であり、一族の伝統から外れたシリウスを公然と非難していました。
  • アルバス・ダンブルドア (Albus Dumbledore)
    1. 彼はダンブルドアの寛容な方針やマグル生まれへの配慮を全く評価していませんでしたが、校長としての権威には逆らえず、その命令を忠実に実行しました。二人の間には、常に緊張感と皮肉の応酬がありました。
  • ハリー・ポッターと仲間たち (Harry Potter and his friends)
    1. 彼はハリーたちを未熟で無礼な若者と見なし、常に見下した態度で接しました。しかし、旅の終盤では、彼らの目的のために不本意ながらも情報を提供するようになり、特にハーマイオニー・グレンジャーの勇気と知性にはある種の敬意を抱いたようでした。
  • フィニアス (Phineas)
    1. ヘブライ語由来の名前で、「神託」や「蛇の口」を意味する可能性があります。これは、彼が物語の中で重要な情報を伝える「メッセンジャー」としての役割を担っていることと関連しているかもしれません。
  • ナイジェラス (Nigellus)
    1. ラテン語の “niger” に由来し、「黒い」または「黒っぽい」を意味します。これは彼の家名である「ブラック」を直接的に反映しています。
  • 彼の生没年(1847年 – 1925年)は、J.K. ローリングが展示会のために作成した「ブラック家の家系図」で初めて明らかにされました。これは原作小説には記載されていません。(ブラック家の家系図)
  • 映画版では彼の役割は大幅に縮小されており、特に『ハリー・ポッターと死の秘宝』でハリーたちが彼の肖像画を旅に持ち出す重要なプロットは省略されています。(映画設定)