守りの魔法
概要
守りの魔法 (Defensive Magic) は、使用者自身、他者、あるいは特定の場所を、危害、特に闇の魔術から保護するための一連の魔法の総称である。これには、直接的な攻撃を弾くための呪文、存在を隠すための呪文、敵を遠ざけるための呪文、そして愛のような古代の強力な魔法まで、多岐にわたる分野が含まれる。守りの魔法は、魔法界における基本的な生存技術の一つであり、特に第一次および第二次魔法戦争のような紛争の時代において、その重要性は計り知れない。ホグワーツ魔法魔術学校では、闇の魔術に対する防衛術の授業でその理論と実践が教えられる。
種類と具体例
防護呪文 (Protective Charms)
直接的な障壁や盾を生成し、物理的または魔法的な攻撃から身を守るための呪文。
- プロテゴ (Protego): シールドの呪文。最も基本的かつ汎用性の高い防護呪文で、多くの呪いや呪詛を弾き返すことができる。使用者や守るべき対象の前に、目に見えない魔法の盾を作り出す。
- プロテゴ・トタラム (Protego Totalum): 特定の空間やエリア全体を持続的に保護するための呪文。『ハリー・ポッターと死の秘宝』で、ハーマイオニー・グレンジャーがキャンプ地を隠すために使用した保護呪文の一つ。
- プロテゴ・ホリビリス (Protego Horribilis): 広範囲を対象とする極めて強力な防護呪文。ホグワーツの戦いの際、フィリウス・フリットウィックが城の防衛を固めるために使用した。あらゆる種類の闇の魔術を防ぐ効果がある。
隠蔽・妨害呪文 (Concealment & Warding Spells)
人や場所の存在を隠したり、特定の人物の侵入を防いだりするための呪文。
- 忠誠の呪文 (Fidelius Charm): ある秘密を、選ばれた一人の「秘密の守人」の魂の中に隠す、非常に強力で複雑な隠蔽呪文。ポッター家の隠れ家や、不死鳥の騎士団の本部であるグリモールド・プレイス十二番地の保護に用いられた。
- マグル避け呪文 (Muggle-Repelling Charm): マグルが特定の場所に近づくと、急用を思い出させたり、危険を感じさせたりして、その場から立ち去らせる効果を持つ。クィディッチ・ワールドカップの会場やホグワーツの敷地など、多くの魔法関連施設にかけられている。
- 忍び寄せ不可能呪文 (Imperturbable Charm): ドアなどの対象物にかけ、音や物体がその境界を通過するのを防ぐ。
- 姿をくらます呪文 (Cave Inimicum): 「敵意に注意せよ」という意味のラテン語から来ており、保護領域内に敵が侵入すると警告を発する効果がある。
古代の魔法と犠牲による守り
特定の呪文に依存しない、より根源的で強力な守りの形態。
物語における重要な役割
- ハリー・ポッターの保護: リリー・ポッターの犠牲によって生まれた守りは、ハリーが成人するまでの彼の生存を保障する上で決定的な役割を果たした。これはアルバス・ダンブルドアの計画の根幹をなす要素であった。
- ハリー、ロン、ハーマイオニーの逃亡生活: 『ハリー・ポッターと死の秘宝』において、三人は逃亡中のキャンプ地にハーマイオニー・グレンジャーが毎日かける幾重もの守りの魔法(プロテゴ・トタラム、マグル避け呪文、姿をくらます呪文など)によって、死喰い人からの追跡を逃れていた。
- ホグワーツの戦い: ヴォルデモート卿とその軍勢による総攻撃に際し、ミネルバ・マクゴナガルをはじめとする教授陣や不死鳥の騎士団のメンバーが、城全体に考えうる限りの強力な防護呪文を施した。これには、城の石像たちを動かして防衛にあたらせるピエルトータム・ロコモーターも含まれる。
学習
- 闇の魔術に対する防衛術 (Defence Against the Dark Arts): ホグワーツの全学年における必修科目であり、様々な守りの魔法や対抗呪文、闇の生物への対処法などを体系的に学ぶ。
- ダンブルドア軍団 (Dumbledore's Army): ドローレス・アンブリッジが魔法省の方針により実践的な防衛術の訓練を禁じたため、ハリーが指導者となり、生徒たちが自主的にプロテゴや武装解除呪文などの実用的な魔法を練習するために結成された。
- 資質: 強力な守りの魔法、特に守護霊の呪文のような高度なものを成功させるには、強い意志、集中力、そしてポジティブな感情が不可欠とされる。
幕後情報
- 映画版では、プロテゴ系統の呪文はしばしば青白く輝くエネルギーのシールドとして視覚化される。特に『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』で描かれたホグワーツの戦いでは、城全体が巨大な魔法のドームで覆われる壮大なシーンとして表現された。(映画設定)